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第24話
「こいつはしょうがないな……」
いつもより早いペースで酒を飲んだ向井はすっかり酔いつぶれ、フローリングに横になって眠ってしまった。向井の腹のあたりでは、クロが丸くなって一緒に眠っている。
立ち上がり、奥から取ってきたブランケットをかけてやると、クロの頭をそっと撫でた。そのようすを瀬戸が何を考えているかわからない目でじっと見ていた。
「……何だよ」
なぜだか責められている気がして訊ねると、少しもどうでもよくない顔をして、何でもありません、と答えるから全くわけがわからない。缶ビールを口に運んで、中身が空になっていたことに気がついた。
「もう少し飲むか?」
いただきます、という答えが返ってきたので、冷蔵庫から新しいビールを取ってきて、瀬戸に渡した。
「どうも」
沈黙が流れる。犬飼は若干の居心地の悪さを感じていた。当事者のひとりである向井の拗ねたような寝顔を見て、この飲み会は失敗だったかなと心の中で思う。
もともと向井は瀬戸に憧れていたところがある。それなのに、瀬戸からは眼中にないように扱われ、いじけた気持ちをひどく拗らせてしまったのが、今回の問題の一番の要因だと犬飼は考えている。何かきっかけがあればと思ったが、どうやら失敗に終わったようだ。
うまくいかないなあ……。
ビールに口をつけながら、犬飼がそう考えたときだった。
「――さっきの話は本当ですか」
突然、瀬戸に話しかけられて、犬飼は「さっき? さっきって何のことだ」と訊ねた。
「盗んだ、盗まないの話です」
「ああそれか……」
犬飼は手に持っていた缶ビールをテーブルの上に置くと、ごく当たり前の天気の話をするみたいに、「信じるよ」と答えた。
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