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第27話
「犬飼さん、これ、持っていっていいですか?」
「ああ、うん。ありがとう」
犬飼が作った料理を瀬戸がリビングへと運ぶ。先にビールを開けながら、まるで自分の家のようにくつろぐ瀬戸を、犬飼はキッチンで料理をしながらちらちと眺めた。
こいつは何を考えてるんだろうなあ……。
ここ最近、何度も思ったことが頭をよぎる。
先日の飲み会以来、ときどきこうやって、瀬戸が犬飼の家にくるようになった。もっとも、ほかの職場のスタッフとの仲は相変わらずで、問題は何も解決していない。
「お待たせ」
料理をリビングへと運ぶと、瀬戸はテーブルの上の皿をずらし、場所を空けた。犬飼がソファに腰を下ろすと、どこからともなく現れたクロが犬飼の膝の上に乗った。瀬戸を警戒しているのか、犬飼が台所に立っているときは、クロはリビングにはまったく近寄らない。同じ部屋の中にいても、瀬戸とクロの間には常にある一定の距離がある。
「いつまでも慣れないなあ……」
「俺に犬飼さんをとられると思って警戒してるんじゃないですか」
「ばっ、何バカなことを言ってるんだよ」
わずかに赤くなりながら慌てる犬飼を、瀬戸が缶ビールに口をつけながらちらりと眺めた。犬飼が大声を上げたことに驚いたのか、膝の上にいたクロが顔を上げ、ぴくぴくっと耳を動かした。
「ああ、ごめんごめん。驚かしちゃったな」
クロの頭をやさしく撫でてやると、瀬戸が何か物言いたげにじっと見ていた。
「……何だよ」
「いえ別に。そいつかわいくないですよね」
「はあ? 何でだよ、めちゃくちゃかわいいじゃないか」
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