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第49話

AOCの仕事は新駅開業に伴う、新都市計画の広告だ。今回の競合コンペは最初からAOCと鳳凰堂の出来レースだという噂もあって、スタッフの中にはどうせ無駄なことならはじめからしないほうがいいと言う者まであった。 「――ということだが、犬飼、お前はどう思う」  社内会議の席で、スタッフの話をじっと聞いていた笠井が訊ねた。犬飼は背筋を伸ばし、スタッフの顔をぐるりと眺めた。 「俺は、やるべきだと思います。もともとこの広告はうちに依頼がきたものです。競合コンペでもなんでも、退く理由はありません」  いいんじゃないですか、という投げやりな声が聞こえた。声がしたほうを見ると、スタッフのひとりが面倒くさそうにイスの背にもたれかかった。 「どうせこの仕事は最初から瀬戸を指名にきたんだ。こいつが何とかしてくれるでしょう」  スタッフの言葉に、周りも同意するような白けた空気に包まれている。名指しされた瀬戸は、その表情からは何を考えているのかわからない。 「いや、それは……っ」 「じゃあ、そういうことでいいですかね」

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