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第58話

 俺もだよ、という言葉まで奪われるように、瀬戸の唇によって自分の唇を封じられた。熱く濡れた舌の感触に、ぞくりと肌が震えた。口内のひどく敏感な部分を撫でるように愛撫され、息が乱れる。  ずっと、誰かと違うことを認めることは恐怖だった。最初はこの無愛想な後輩が苦手で、何を考えているのかわからない、心の奥まで見透かされそうな瞳が怖かった。自分が望んでも届かないその才能に嫉妬して、それでもいつも気がつけばその存在を意識していた。そう、本当はもうずっと前から瀬戸のことが気になっていた。  いつの間にかシャツの隙間から忍び込んだ男の手が、犬飼のわき腹から腰のあたりを撫でる。耳朶を甘噛みした男の唇は、まるでキスをねだるようにさらした犬飼の首筋をたどる。 「あぁ……っ!」  素肌に触れた男の手の感触に、犬飼は喘ぐように大きく胸を反らした。崩れそうになった犬飼の腰を瀬戸の手がしっかりと支え、足の間に男の膝が割り込む。 「ちょっと、待ってくれ……っ」  力が入らなくなった手で瀬戸の身体を押しやり、シャワーを浴びたいと告げるが、男の身体はびくりとも動かない。 「わぁ……っ」

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