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第59話
すでにゆるく勃ち上がっていたそれを瀬戸の足で刺激されて、犬飼は真っ赤になった。そんな犬飼の反応を見て、瀬戸はふっと笑った。
「何を恥ずかしがってるんですか」
甘さを含んだ声にぞくぞくっと腰が震え、犬飼はぱっと耳朶を塞いだ。そうしていても、まだ耳元に瀬戸のくすぐったい息の感触が残っている気がした。
瀬戸は、そんな犬飼の反応を楽しむかのように、くすくすと笑った。
「犬飼さんの希望にはなるべく添えたいですが、もう限界なんです」
えっ、と思う間もなく横向きに抱き上げられ、ぎょっとした犬飼はとっさに落とされまいと瀬戸の首にしがみつく。
「ここでやられたくなきゃ大人しくベッドに案内してください」
ここって、え、ここでっ?
ふたりの足下では、クロがカリカリを食べている。
さすがにそれは勘弁願いたい犬飼は、渋々瀬戸を寝室へと案内した。口では往生際悪く抵抗を見せながら、――そう、このときはまだ瀬戸のことを甘く見ていたのかもしれない。
「せ、瀬戸……っ。先にシャワーを浴びた、……んっ」
普段は引き戸が目隠しの代わりになっている寝室へと入り、ベッドに下ろされると、再び瀬戸のキスで唇を封じられた。瀬戸は「ちょっと待っていてください」と言い置くと、キスの余韻にぼうっとなっている犬飼を残し、自分はいったんリビングへと戻ると、何かを手にして部屋に戻ってきた。寝室の扉を閉める瀬戸を見て、犬飼はとっさに声を上げた。
「瀬戸、それだとクロが入れない」
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