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第68話
挿れますよ、という声と共に、瀬戸のそれが犬飼の中を押し入ってくる。
正直、苦しくないと言えば嘘になった。日頃の運動不足が祟って、犬飼の身体はとっくに悲鳴を上げているし、瀬戸の性器は自分の内部で苦しいほどにその存在を主張している。でも、犬飼は決してやめたいとは思わなかった。
「犬飼さん、大丈夫ですか?」
やがてすべてをおさめきると、瀬戸が不安そうにのぞき込んだ。まるで迷子になった子どものように途方に暮れた顔だ。いま自分たちがしている行為は互いに望んでしていることなのに、普段は他人のことなど気にもとめない瀬戸が心の弱みをさらけ出したような頼りない顔をしていることに、犬飼の中で猛烈な愛しさがわいた。
「……お前、俺が大丈夫じゃないって言ったらどうするんだよ」
もちろん、そんなことは微塵も感じていないのに、悪戯心がわいて、ついそんな意地悪なことを言ってしまう。
犬飼が本気じゃないことがわかったのだろう、瀬戸は軽く目を瞠ると、にっこりと笑った。
「そのぶんあとでお詫びをします」
犬飼はふっと鼻で笑った。
「なんだよそれは」
キスしたいと思った犬飼の気持ちを察したように、すぐに瀬戸の唇が降ってくる。
「わかりますか、あんたの中に俺が入っているのが」
接合部を撫でられ、ぞくぞくっと腰が震えた。犬飼は瀬戸の背中に腕をまわした。
「あっ、……ん、あ……っ」
犬飼が感じているのを確かめるように、瀬戸が甘やかに腰を送ってくる。はじめはゆるやかだった動きは次第に激しさを増し、いやらしく捏ねるような動きへと変わる。犬飼の中で逃げ場のない切望感のようなものが高まっていく。
「あぁっ、や……っ、ンッ、あぁっ」
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