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第9話

「もう、いいかげん、認めちゃいましょうよ」 後輩は、あわれむように言った。 「何をだよ」 俺は尋ねる。 「こうなったことに対してですよ」 「こうなった?」 俺の声は、緊張した。 「ええ、そうですよ」  俺は、おそるおそるたずねる。 「あの……知りたくないが、俺、ゆうべ、おまえになにかしたか?」 「さあ……」 栃木は首をかしげる。 「僕も、わからないんですけど、たぶん、そういうことなんじゃないですか? 状況からして」 絶望的なことを、栃木は、涼しげな顔でのたまった。  俺は、頭をかかえた。  気まずい沈黙ののち、 「あのぉ」 と、おずおず栃木が声をかけてきた。 「……茨城さん、もしかして、処女でした?」 「しょじょぉー!?」 「先輩、声大きいですよ」 栃木は、俺をたしなめる。なにその大人みたいな、俺が中学生みたいな扱い! 「しょじょって、なあ、おまえ、俺になんかしたのか!? おい、おまえ、俺になんかしたんだろう!」 俺は、栃木につかみかかった。 「え、されたかったんですか?」 栃木は、恐ろしいことを言った。 「それなら、今から、しましょうか?」 モテるやつは恐ろしい。なんなんだこの余裕は!

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