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木の月が終わり、水の月がやってきて。
星の月まで…後ひと月ほど。
僕は、毎日毎日公務の妨害を続けた。
ズキズキ心は痛むけど、そんなの気にしてられない。
ヴァンの苛立ちは大きくなる一方で、僕から何かを察しようとしていたロルドさんの目も…段々と僕ではなくヴァンを宥めることに精一杯になってきてしまって……
そして、遂にーー
ガチャンッ!
「キュッ!」
ぐいーっと書類に張り付く僕をヴァンが持ち上げた時、ばたつかせた足がインク瓶に当たりベチャッと溢れてしまった。
(しまった!!)
真っ黒いインクは机にどんどん広がって、書類はおろか床にまで流れてしまって……
「ーーっ、リフィル!!」
「ッ、」
久しぶり呼ばれる、本当の名前。
前を見ると、とても苛立っていて……でも悲しそうにクシャリと顔を歪める大好きな顔があった。
「お前……あれからどうしたんだよ!なんでこんなことばっかするんだ!? そんなに俺が大人になるのが嫌か!」
「キュ、キュキュ、」
「キューキュー言ってちゃわかんねぇよ!!」
「………ッ、」
(違う…違うんだヴァン……)
本当は、凄く嬉しい。
こんなにヴァンは立派なんだよ!って、この国のみんなに大声で自慢したい。
でもーー
「……お前には、1番背中を押して欲しかった」
(っ! ヴァン僕は、)
「ロルド、こいつを外へ出せ」
(…………え?)
首根っこを摘まれたまま、ロルドさんの手の中にストンと落とされる。
「キュキュ!」
「……申し訳ありませんリフィル様。公務と勉強の時のみ、これから外でお遊びください」
小声でそう言われて、窓を開けられ
ふわりと離されながら、後ろで窓の鍵が締まる音がした。
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