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「キュゥ……」
眠るヴァンの枕元に、そっと忍び寄る。
外に出されるようになってから、僕はヴァンと一緒に寝ることが無くなった。
「近寄るな」というように冷たくあしらわれ、壁の方を向いて寝られてしまう。
だから、僕も自然と窓辺で寝るようになってしまって……
(ねぇ、ヴァン)
ーー明日は、いよいよ成人の儀の日だね。
この日の為にいっぱい準備してきたね、お疲れさま。
いろんな人が訪ねてきてたけど、ちゃんと全ての人にしっかり対応してたね。
……やっぱり、ヴァンは立派だよ。
スースー寝息をたててる頭を、起こさないように尻尾で優しく撫でる。
僕、ヴァンにいっぱい嫌な思いさせちゃったね。
書類もインク浸しにしてごめんなさい。あの書類は大丈夫だったかな……
外に出されても遊ばず窓に張り付いててごめんね? 毎日気が散ったよね。時々手止めさせちゃったね。
ーーねぇ、ヴァン。
無造作に投げ出されてる、大きな手。
その指の先に、ちょこんと頭をくっつけた。
こんな事になるなら、もっと頭を撫でてもらえば良かった。
指先であごの下とか羽の付け根を擦ってもらっとけば良かった。
暖かい掌に、もっと包まれとけば良かった。
もっともっとーー
(〝リフィー〟って呼んで…笑って……ほしか、っ)
ポロリと大粒の雫が目から落ちて、それがどんどん溢れてシーツに消えていく。
(ねぇ、ねぇヴァンっ)
僕ね、本当にヴァンのこと大好きなんだ。
嫌いになったことなんて一度もない。本当だよ?
ずっとずっと…この先も、お母さんやお父さんよりヴァンのことが好き。
だからね?
「キュー……ッ」
(僕のこと、嫌いにならないでっ)
喧嘩なんかこれまでしたこと無かったから、どうやって仲直りすればいいかわからない。
僕も意地張っちゃって、ついあんな態度取ってしまった。
もうダメなのかもしれないけれど……でも、どうかお願い。
ーーせめて…僕のこと好きでいて欲しいよぉ……っ。
ポロポロ 涙はなかなか止まってくれなくて。
そのまま、指先に触れるか触れないかのところで、小さく丸まって眠った。
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