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第6話 ここで、リザンテラとは:管理人

地面の下に咲く花がある、という話は、もう30年くらい前から知っていた。 そのことは、頭の片隅に、ポツンと置いたまま、フツーの生活を送っていた。 *  *  * きっかけは、リーマンショックの時だったと思う。 あの時は、日本はもとより世界中が大混乱になった…のが、実は表面のことで、 深いところ・知らないところでは、着々と進んでいたところや一挙に大逆転したところも、 後になって聞いた。 しかしオレは、世の流れに逆らうことなく、会社を辞めることに、させられた一人であった。 東京の、ちょっと大きめの公園に、年末年始にボランティアの炊き出しに、無職の人々が並んでいる姿がニュースになったが、あの中に、オレが映るところだった。 実際には、1か月の無職状態だけで済み、そのあと正社員で雇用されたのだ。 この時の経験が、今に続いているんだろうな…と、ふと考えることがある。 *  *  * 地下に咲く花は、オーストラリア大陸の、一部に残っているだけの、本当に希少な…植物という言葉も適当かは疑問があるが…そういう、リアルに実在する植物だ。 根も葉もない植物というのが、これにあたる。本当に、花と茎しかないのだ。 しかも花が咲くのが地面の下なので、なぜ花が開く必要があるのかという根本的なところまで不思議な存在なのだ。 花の大きさは、人の親指くらいの大きさだ。思ったよりは、大きいとイメージした。 しかし、花が開くのも、おそらく理由はあるのだろう。普通に考えれば、花が咲かなくたっていいのだ。地上に咲く花の意味や構造を考えると。地下では意味が無いようにも思える。 しかしこの花には、花粉もあり、種も出来る。なのに地下で一生を終える。 なぜ地下で花を開かなければならないのか。こればかりは、花にならないと解らないだろう。 *  *  * 人間、出来る人ばかりとは限らない。 知能指数IQも標準偏差値なので、100の人が標準で、必ず80の人も120の人もいるのだ。 性癖も、同性が好きだというだけで叩かれる傾向を、頑(かたく)なに同調する人はいる。 収入が低い人と高い人は、切り離して住むべきと、堂々と言える人もいる。 オレは共産主義ではないが、そこはもう少し隔離を縮めてもいいのではないか、という考えだ。多少の傾きや隔たりは残ってもいいけど、という、穏やか戦法で。 劣ってるとみられる人を、オレが見ても、「可哀そう」という感情が湧かない。 他に出来るものを持ってるからだ。 人の性格のバロメータは、15の基準の大小で説明が利くという。 怒りっぽいとかせっかちだとか、それらの程度が組み合わさっているのだそうで、 極端なものが無い、平均値だらけの人が一般人と呼ばれるだけ。 だからオレも、哀れみを感じるバロメータがほとんど無いのだろう。 何かが極端に大きかったり小さかったりすると、世間では一般人とは違うと言われる。 オレなど、血も涙もないとか言われそうだけど。でもオレなど、まだいい方じゃないかな。 仕事も出来ない、生活もできない、そういう人が、実際に世の中に、少数だけどいるのは確かだ。 あーいう人、こんな人、皆さんも、思い当たるフシはあるかもしれないが、 それでも、そんな人だって人間だし、出来ることはいろいろある、ハズだ。 医学的に手当てをしなければならない人は、専門の人にお願いする。オレは出来ないから。出来る人にお願いします。 そこまでじゃないんだけど…という人が、世間から見えないところにいる。それが見える人には、見えている。 オレは、それが見えるようになった。それだけだ。 その、オレが見えるようになった、その人たちは、多くは引きこもりという名称で括られているが、ずっと建物の中に生きているわけではない、ということだ。 他の人さまと同じように、生活もしている。ただパッとしていないように見えるので、気が付かないだけだ。 *  *  * リザンテラという花は、ざっと説明すると、こんなようなものだ。 なにせ貴重な花なので、生育している場所も、完全保護区域内だけ。研究者の人数も限られているので、その研究者もめったに立ち入ることすら出来ない状態だという。 本当は、他の地域でも、地面の下で花咲く植物は、あるのかもしれない。 探していないだけ、見える人がいないだけなのかもしれない。 それが見えるようになったら、すぐそこに、地下に咲く花があるかもしれない。 *  *  * 人は、才能を開花させるといった表現をすることがある。 出来なかったことが出来たとき、ぱあぁっといった気分の時、この言葉を用いる。 その才能を、他の人から見たときには、その花は開いているのが分るだろうが、 その人が、他の人に見つかっていない時だとしたら。 誰も見ていないけど、その人は花を開くことが出来たとしたら。 その花は、見える人によって、地上に姿を現せることが出来るだろうか。

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