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第8話 住む、ということ:同居人R

時系列がバラバラになってるけど、これはシェアハウスに来てから少し経った頃。 近くに役所の支所があったので、引っ越ししての手続きをしに行ったんだ。 管理人さんに言われた通りの場所まで来たけど、えっと、すみません、引っ越ししてきたんですけど… 「ああ、それでしたら、こちらの3番の窓口で受け付けします。」 と、機械から出た番号札を持って、待っていた。すぐに呼ばれて向かった。 「なにか書類とか持ってきていますか?」 書類?…あ、いや、何も無いんですけど… 「転出届とかは?」 え?いや、それもない… 「いつ頃引っ越ししてきましたか?」 あ、いや、引っ越しというか… なんてしどろもどろしてるのが分かったらしく、イチから説明してくれた。 「引っ越しすると分かったときに、引っ越ししてくる前のところの役所に行って、手続きをしてくる必要があります。今回は北海道からだから、市町村を超えて来てますね。そうなると転出届というものが必要になってきます。ちょーっと遠いところですから、ご両親がおられるのであれば、向こうの役所で手続きをお願いすることも出来ます。その転出届をこちら…あぁ、あなた様宛ですけどね。送っていただいて、こちらが受け取り、ここで転入届を書いて、引っ越しの手続きが済む、という手順ですね。」 へー、知らなかった。 「身分証明書は、何か持っていますか?これも住所変更しておく必要があります。免許証だったら警察署に行かなくてはなりませんし。」 あー、そういえば、免許もまだ取ってない。 「それなら、引っ越してきたこちらの住所で構わないので、住基カードを作っておくといいと思います(※)。」 (※) これは、この時に言われたことなので、現在はすべてマイナンバーカードに替わっています。住基カードをまだ持っている人も、マイナンバーカードに切り替えなくてはなりません。役所で切り替えをお願いします。僕からのお願いです。 「…はい、これが身分証になりますので、何かしらの手続きには、このカードが必要になります。給料や税金にも関わることなので、大事に持っておいてください。」 ほう、そしたら申し込んでおこう。 「引っ越ししたら、家の電気や水道・ガスの申し込みは、もう済んでいますか?」 あ、それは、もう住んでいる人のところに住むので… 「んー、そうなると、その方は親戚ですか?」 あ、まあ、そうです…(というふうに言っといてと言われてた) 「その家の方の扶養に入る訳ですか?」 あ、えっと、セタイブンリでやるので(と、メモを見ながら) 「ああ、世帯分離ですか。それなら、家主ということですね。わかりました。ではその手続きはよろしいですね。住民票は一部、出しておきましょうか?」 えっと、えっと、分からないけど、はい、1枚で。 「それでは、この番号札を持ってお待ちください。」 その札を持って、席について、ふーとため息をついた。 なにこのメンドクサイ手続きは?? *  *  * 「はははっ。大変だったでしょ。」 家に帰って、管理人さんにいろいろ話を聞こうと思ってた。これからどう手続きするのかを。 「住民票が取れたら、もうとくに無いかな。」 …あ、そうなの? 「いま住んでる、このシェアハウスの家に、みんなは家主として入ることにするから。他から何か言われたら、世帯分離してますと言って。それで大丈夫だから。」 セタイブンリね。とりあえず分かりました。でも、光熱費…ってものもあるんでしょ? 「それ、いま、払える?」 無理…です… 「払えるようになったら、でいいよ。無いところには払えるものが無いからねえ。」 いいんですか?はい…。その点は、お世話になります。 「こういう、初めにしっかりしておかないと、後々面倒なことになるし、住むってのは一番最初が肝心だから、これはしっかりやっておかないとね。書類の手続きと、お金の支払い。これは確実に。」 うーん、ますます、めんどくさい。 「ここさえ出来ていれば、あとは、シェアハウスにかかるところは手続き簡単でいいんだよ。管理者の範疇だけでいいんだから。管理者さんが自由に決められるからね。」 寮みたいにするとか、下宿みたいな感じにするってこと? 「生活感で言うと、それもある。金銭的な面もあるし。まあ、シェアハウスで住む分には、そんなに難しい契約はしないな。オレはね。」 あー、金銭面かぁー。 「家賃と更新時の出費、光熱費は固定費でいいとして、食費は変動するからその都度かな。他に医療費も緊急時用に取っておくようにしてるし、たまには外食もしたいし、備品が必要な時だってあるし。個人的なものだったら、あぁ保険(任意)だって入ってないんでしょ?健康保険も年金も払わなきゃならないものだから、それも引かれるよね。」 けっこう……、お金、掛かってるんだな……。 「ウチは、そんな堅苦しいことはしてないから、自由にやってっていいと思ってるよ。」 なんて、なんて、軽~く言ってるけどさ。 こういうことがあると、つくづく、独り暮らしは出来ないと思った。 いや、管理人さんくらい慣れてる人だったらいいんだけど、こんなこと教えてくれる人もいないし、ネットで調べたってここまで書いてないし。 っていうか、ここのシェアハウスが、ここまでやってくれてるんだ、ということだよな。 他のシェアハウスって、こんなに手厚いことやってくれてないよ。勝手にやれって言われるだけだもん。 って、独り立ちしたら、こういうこと全部自分でやるってことかあ。 出来るのかな? …それ以前に、稼げるようになるんだろうか? うーん、わからん。

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