7 / 24
第7話
合宿当日。
両親に付き添われ、差し入れという事でダンボールに入ったスポーツドリンクと共に隆志は学校に来た。
「ゆうだーい!!ポッキーゲームしよ?」
「えっ、何でだよ」
「移動中ヒマだから」
バスでの移動。
勇大は隣に隆志が座る事になり、それだけで嬉しいのにゲームに誘われてドキッとさせられていた。
「ホラ、早く!!」
「わ、分かったよ…」
ポッキーを咥えて待ち構えている隆志。
ピンク色の唇が何だか色っぽくも見える隆志にドキドキしながら勇大はポッキーの端を咥え、少しずつ食べていく。
(うわ……っ、これ以上は無理だろ……)
すぐ傍に隆志の顔が来て、勇大は動きを止めた。
チョコレートのものとは違う甘い匂いが鼻をかすめ、その匂いをもっと傍で嗅いでみたいという欲求をグッと堪える。
(落ち着け、俺。これはゲームだし、何より隆志も俺も男だ。何をそんなに動揺する必要があるんだ)
「……やった、オレの勝ち」
そんな勇大に隆志はクスッと悪戯っぽく笑いかけると、残りのポッキーを引っ張って食べきってしまう。
「勇大くん、キスしちゃうとかって思ってビビっちゃった?」
嬉しそうにポッキーを食べながら、隆志は勇大の真っ黒で短く切った髪を撫でる。
「そ、そんな事ねぇよ!っていうか俺、まだキスした事ねぇし」
からかわれて恥ずかしい気持ちになった勇大は、動揺し過ぎて話さなくてもいい事を話してしまっていた。
「えっ!?そうなの?」
「悪いかよ!」
「いや、悪くはないけど」
今、恋をしている事さえ分かっていない勇大にとって、キスはまだまだするには時間がかかる……はずだった。
ともだちにシェアしよう!