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第8話
合宿する施設に到着し、与えられたメニューを何とかこなした勇大。
隆志も体調に無理がないように出来る範囲で参加し、合宿を楽しんでいる様子だった。
が、夜になって夕食を済ませた後の入浴時間になった頃、隆志は急に発作を起こしてしまった。
「薬……効くまでの間だから心配しなくていいから……」
苦しそうに呼吸している隆志の姿を見た勇大にとって、それは信じ難い言葉だった。
上級生に託された事もあり、勇大は部員たち全員が泊まる部屋ではなく別室に寝かされていた隆志の傍にずっと付き添っていた。
身体を横にして荒い呼吸を繰り返している隆志。
勇大はその背中をさすっていた。
何をしていいか分からなかったが、幼いきょうだいが体調不良の時にこうして背中をさすったら安心して眠りについてあた事を思い出したからだ。
「ゆう…だい……」
「こうされたら辛いか?」
「……ううん、勇大の手、あったかくてホッとする……」
苦しそうにしながらも、隆志は勇大に笑顔を見せる。
「落ち着くまで無理に話さなくていいから」
「ありがと、そうさせてもらうね…」
薬が効いてきたのか、隆志の少しづつ呼吸が穏やかになっていく。
目を閉じている隆志に、勇大は眠ってしまったのかと思いその顔をまじまじと見てしまっていた。
近くで見ると、その顔立ちの美しさが更にはっきり分かる。
長い睫毛も、白い肌も、薄めのピンク色の唇も。
やっぱり同じ男には見えない、と勇大は思った。
(隆志の事……ずっと見ていたくなるこの気持ち……何だろう……)
勇大は、湧き上がってくる衝動のまま、背中に触れていた手を隆志の頬に伸ばしていた。
柔らかなその肌を撫でると、他のところにも触れたくなってしまう。
(……起きるかな……)
指先で唇に触れる。
艶々として弾力のあるそれに、勇大は指だけを触れているのがもったいなく感じてしまった。
『勇大、キスした事ないんだ〜』
隆志のあの様子だと、隆志はもうキスはした事があるんだろう。
「…………」
そう思ったら、無性に隆志の唇を奪いたくなって、勇大は実行してしまっていた。
(……あったかくて柔らかい……って……)
唇を離してから、勇大は我に返る。
(俺、何て事を……!!)
眠っているからとはいえ、勝手に、しかも男の友人にキスをしてしまった。
自分が信じられなくて、勇大は慌てて隆志から離れ、部屋を出ていた。
「……勇大……」
その行動を隆志がずっと気づいていたのも知らずに。
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