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第10話
合宿最終日。
今日は他校との練習試合を終えてから帰校する事になっていて、隆志と唯はスターティングメンバーに選ばれ、勇大は控えだった。
(試合前に何とか話しておかないとな)
そう思った勇大は朝食前に隆志に声をかけ、食事後に少し時間を作ってもらおうと思った。
「おはよ!勇大」
「お、おはよう、隆志」
「一緒に朝飯食べない?話したい事もあるし」
「あ、あぁ、いいよ、俺も話したい事あるから」
朝起きてすぐ、隆志から声をかけられる。
何だろう、と思いながら、勇大は隆志と朝食が用意されている部屋に向かった。
朝食はバイキングで、席も自由に座れるようになっている。
ふたりは食べ物を選ぶと、ふたり用の席に座り会話もなく黙々と食べた後、外に出て話をする事にした。
「あのさ、ずっと黙ってて悪かったんだけど、勇大、初日の夜にオレにキスしたよね?」
「えっ、あっ、隆志あの時起きてたんだ……」
隆志から言われ、勇大は驚きで本音が出て一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
「……ごめん、嫌だったよな。俺、男なのに……」
「いや、それは別に。男とキスしたの、初めてだったけど……」
隆志の顔が紅くなっていく。
「それよりも、勇大と普通に話せない事の方が嫌だったんだ。オレ、キスされたの嫌じゃなかったし、むしろドキドキした。だからさ、もうオレによそよそしい態度、取らないで欲しい」
「う、うん、分かった。ごめん、隆志」
勇大がどう話をすればいいか迷っている間に隆志がその想いを伝えてくれた。
「……で、勇大はオレの事、どう思ってるの?」
「えっ」
「キスしてくるって事は、そういう目で見てるって思っちゃったんだけど……」
その答えがよく分からないのに、隆志はドキッとさせるような目をして勇大の傍に来る。
「あ、えっと、それがよく分からなくて。俺、こんな気持ちになったの初めてで、唯にも相談したんだけど、俺、隆志の事、特別ではあると思うけど、それが好きなのかどうか……」
勇大は正直な想いを口にする事で隆志の想いに応えようと思った。
隆志はそんな勇大の言葉を聞くと、クスッと笑ってみせる。
「勇大、サッカーしかやってこなかったんだね。普通、好きな人じゃなかったらキスしたくなる事もないと思うんだけど」
勇大の頬に触れてくる隆志の手。
白く細長い指が綺麗だと勇大は思って見てしまっていた。
「オレは好きになっちゃったからね、勇大の事」
「隆志……」
そう話して隆志は抱きついてきた。
胸が重なると、そのドキドキが伝わってきてこちらもドキドキしてしまう。
「『好き』が分からないみたいだけど、それならオレの事を1番特別な人だって思ってよ、勇大」
隆志からする、甘い匂い。
それにまた、勇大は隆志に触れてみたいと思ってしまった。
「分かった……」
話の途中で、隆志がキスをしてくる。
「……!!」
一瞬の事で、勇大は棒立ちになっていた。
「勇大もいきなりだったから、お返し」
顔を赤らめながら笑顔を見せた隆志。
その可愛らしい表情に勇大はますます惹かれていく自分をまだよく理解してなかった。
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