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第12話
「出来たよ、勇大」
「お、サンキュー……って、唯、これやりすぎじゃねぇか?」
「あははは!!勇大、おかまバーの人みたいだな!」
勇大、隆志、唯の3人は学校祭での学年全体の出し物である劇、『眠れる森の美女』に参加する事になった。
両親が美容室を経営して自らも美容師の仕事が好きな唯はヘアメイクや衣装の担当として、隆志は推薦多数で主役のオーロラ姫、そして勇大は隆志の相手役であるフィリップ王子役に選ばれていた。
「隆志、次やるからこっち来て」
「リょーかーい!!」
今日は衣装に合わせてヘアメイクをする日になっていて、唯がサッカーとは違うイキイキとした顔を見せている。
例年、主役は男子生徒が女装して劇をするのが恒例になっていると上級生から聞いていたが、男子生徒がヘアメイクを担当するのは唯が初めてらしかった。
隆志が主役に選ばれたのも人気と共にそうした例年に倣っての事だったりするが、勇大が選ばれたのは隆志の一声だったりする。
人気女性歌劇団をイメージしたヘアメイクにしたい、という劇を取り纏める演劇部の女子生徒により、勇大もつけまつげをつけさせられ、目鼻立ちがくっきりとしたメイクを施されていた。
「唯、こんな事いつ出来るようになってたんだよ」
「うーん、小5か小6くらいかな?お姉ちゃんたちにモデルになってもらったり教えてもらったりしてたんだ」
隆志にメイクをしながら勇大と話す唯。
その手さばきはかなり手馴れているように見えて、テレビで見た事のあるメーキャップアーティストの様だった。
「へー!唯、ホントに美容師の仕事やりたいんだな!!」
「あぁ、親の店で何でも出来る美容師として働くのが夢なんだ」
楽しそうにメイクをしている唯と、されている隆志。
そんなふたりの貴重な様子を女子生徒たちはこぞってスマホのカメラに収めていた。
「メイクしてる灰田くん、カッコイイ!!」
「白川くんってホントにキレイよね〜」
聞こえてくる感嘆の声。
唯にメイクをされている間の隆志は、確かにますます綺麗になっていくように見えた。
「ん、こんなとこでどうかな?」
「わぁっ!灰田くんスゴい!!白川くんめちゃめちゃキレイ!!」
「そ、そう?なんかオレじゃないみたい……」
女子生徒たちに騒がれている隆志。
勇大はそれを少し離れたところで見ていた。
いつもの愛らしさというよりは色っぽい雰囲気が漂っているように見え、口紅をしているせいかいつもよりも紅く艶っぽいそれに、勇大はすっかり魅了されていた。
「黒澤くん、悪いけどこれから衣装着て最後の踊るシーンの練習したいんだけどいい?」
「あ、あぁ……」
触れたい。
あの唇に触れてみたい。
そんな勇大の想いは日に日に強くなっていった。
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