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第13話
学校祭当日。
「勇大、セリフ間違えるなよ」
「隆志もな」
軽いリハーサルをしたあと、ふたりは本番を迎えていた。
動きにくい衣装と慣れないメイク。
それでも勇大は必死に王子役に徹していた。
「ここで君と出会う夢を見たんだ……」
「わたしも……貴方をいつも夢に見ていたの……」
裏声で女声を出す隆志。
手を繋いで歌って踊るシーンは、隆志と完璧にさせる為に部活後も残って練習した思い入れのあるシーンだった。
「マジかよ、あのお姫様、男なんて信じられねぇ」
「歌うまで分かんなかったよね!!すごい美人!」
「相手役も歌上手いよな」
ふたりの演技に、鑑賞していた誰もが感動していた。
終始安定した演技でミスなく進んでいく劇。
魔女を倒し、眠っている姫を王子がキスで目覚めさせるというクライマックスのシーンを迎えると、舞台袖で勇大は深呼吸をしてから舞台に上がった。
照明が消えた薄暗いそこに寝たふりをしている隆志がいて、台本ではキスをする真似でいいという事になっていた。
「…………」
が、勇大は目の前にいる隆志の美しさに惹かれ、本当にキスしてしまっていた。
「えっ!?」
「黒澤、マジでキスしてない?」
「まさか、フリでしょ、フリ」
間近で見ている人がいないため、ライトがついても辛うじて本当にしているようには見えなかった。
「……!!」
目を開いた隆志の顔が紅く染まる。
「……君がオーロラ姫だったんだね。僕の愛する、未来の花嫁……」
その顔がまた愛おしくて、勇大はセリフの後に隆志を抱き寄せるともう一度キスをしてしまっていた。
それも会場がザワついたものの、観衆には本当にしていないという風に見られていた。
「あ……貴方がわたしの……」
動揺で声を震わせながらも、隆志は最後まで役を演じ切っていた。
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