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第19話

それから、ふたりはたまにお互いの欲求を満たし合う仲に進展した。 最初は未経験である事で自信のなかった勇大だったが、回を重ねる毎に隆志の弱い所も分かってきて、もっと隆志を悦ばせたいと思うようになっていた。 進級したふたりは同じクラスになり、 ふたりでクラス委員を務める事になった。 部活では新入部員の指導役として唯も含めて3人で活動する事になった勇大。 が、試合では途中出場の機会が増えてきたものの、フル出場はなかなか果たせないままだった。 「今日の鍵閉め、唯だっけ?」 「あぁ、確かそうだったよな」 部活が終わり、隆志と着替える勇大。 「唯、まだ戻って来ないのか」 「紫垣に頼まれて練習付き合ってるっぽかったよね」 ふたりの話題に出ている新入部員の紫垣 晄(しがき ひかる)は小柄ながら天才キーパーとして中学時代から注目されていたりする。 「唯って紫垣といる事多くない?」 「あぁ、そういえばそうだな。昼も紫垣に誘われたからって一緒に食べなくなったよな」 「……付き合ってるのかな、ふたり」 「えっ」 隆志の言葉に、勇大は驚きながらもそうかもしれないと思った。 というのも、唯は晄が入部するとその姿をずっと見ているような印象があったし、晄の方も唯の傍で楽しそうにしている姿をよく見かけていたからだ。 「だとしたらオレら邪魔じゃん、早く帰ろ」 「あ、あぁ……」 隆志が勇大の手をとって部室を出ようとする。 そこに、ドアが開く音がした。 「お、勇大、隆志」 「勇大さん、隆志さん、お疲れっす!!」 汗だくのふたりは笑顔で声をかけてくる。 「練習熱心だな」 「今日、唯さんが鍵閉めだって聞いたので付き合ってもらいました!!」 明るく、人懐っこい晄。 勇大も隆志も可愛い後輩だと思っていた。 「唯、良かったな、慕ってくれる後輩が出来て」 「お、おう……」 隆志の言葉に、唯は照れくさそうに笑う。 「せいぜいガッカリされないようにな、じゃ」 「勇大!お前っ、一言余計だから!」 唯をからかうと、ふたりは先に部室を出ていた。 「ん〜……付き合ってないかも」 学校から出ると、隆志が言った。 「そうなのか……」 「鈍い勇大くんには分からないだろうけど」 「悪かったな」 悪戯っぽく笑ってみせる隆志。 「でも、お互いに好きな気持ちはありそうだから、そのうち付き合うんじゃないかなぁ……」 人気の少ない道に入ると、隆志は勇大の腕に自分のそれを絡めてくる。 「唯にも幸せでいて欲しいんだよね、オレらみたいにさ」 少し頬を赤らめながら話す隆志に、勇大は触れたくなる。 「それは……そうだな……」 「勇大、今オレに触れたいとか思ったんでしょ?」 わざと視線を外すと、隆志にそれを見抜かれ、くすっと笑われた。 「だいぶ勇大の事、分かってきたよね?オレ」 隆志と出会って、特別な存在になって、もうすぐ1年。 勇大は隆志の尻に敷かれていた。 「今日、ウチ寄ってく?夜遅くまで誰も帰って来ないよ……?」 その瞳は明らかに勇大を誘っていた。 「……行くに決まってるだろ……」 やられっぱなしだと思って、勇大は隆志を引き寄せると、そう耳元で囁いた。

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