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第21話
天音との事を思い悩んでいるうちに時間は過ぎ、授業も部活も終わっていた。
「勇大、今日の鍵閉めオレだからここでちょっと話しない?」
「あ、あぁ……」
着替えていると、隆志が声をかけてくる。
勇大も隆志と話がしたかったので、すぐに承諾の返事を伝えていた。
部員全員が帰るのを見届けると、ふたりは部室にあるベンチに腰を下ろして並んで座った。
「昼休みはゴメン、勝手に後つけたりして」
隆志の目に涙が浮かんでくる。
「オレ、サイテーだよね。勇大の事、信じてるって思ってるのにセンパイが相手だったら断れなくて浮気しちゃうんじゃないかって思ったら黙って待っていられなくて……」
「隆志……」
静かに涙を流している隆志を、勇大は抱きしめていた。
「三笠センパイ、もしかして勇大の事が好きなんじゃないかってずっと思ってた。だから勇大から今日ふたりだけで話したいって言われた話を聞いた時、すごく嫌な気持ちになったんだ」
「そうだったんだ」
勇大は自分が全く気づかないうちに隆志がそんな思いを抱えていた事に内心驚く。
「嫌いになったでしょ?オレの事……」
「……ならねぇって……」
隆志の目から零れる涙を舌で舐めとると、勇大はキスをした。
「お前、俺の事分かってんじゃなかったのかよ」
「でも……」
「俺にはお前だけだ」
隆志をきつく抱きしめて、その髪を撫でる。
その高鳴る鼓動と仄かに香る甘い匂いに、勇大は心地良さを感じた。
「…ありがと、勇大…」
そう言って、隆志は勇大の頬に自分のそれを寄せ、背中に腕を回して抱きしめ返してくる。
「隆志、俺もお前に話したい事があるんだけどいいかな?」
「ん……何?」
「あのさ……」
勇大は天音に次期キャプテンになって欲しいと言われた事を隆志に話した。
「俺、一番実力ないし、三笠先輩みたいに纏める力もないから俺なんかで務まるのかなって思って……」
「……勇大、それ本気で言ってる?オレらの中でキャプテンやるとしたら勇大しか考えられないでしょ」
俯き気味に話した顔を、隆志が持ち上げて両頬を叩く。
「オレが支えてあげる。だから安心してキャプテンやりなよ」
「隆志……」
頬がじんと痛かったが、勇大は隆志の言葉が嬉しかった。
「一緒に頑張ろ!唯も力になってくれるだろうし」
「あぁ……」
ふたりは笑顔を交わし、キスをした。
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