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第22話
夏休み。
勇大は新キャプテン、隆志は新副キャプテンとして後輩たちを引っ張る立場になっていた。
ほぼ部活で終わりそうだった夏休みだったが、お盆休みが2日あり、その期間には市内でお祭りと花火大会が予定されていた。
隆志から誘われ、勇大は一緒に行く事にしていたりする。
「凄いな、隆志にこんな特技があったなんて」
隆志に家まで迎えに来て欲しいと言われていたのでそうしていた勇大。
すると、玄関先にはグレーの着物を着た隆志が出迎えてくれて、勇大にも自分の濃紺の着物を着せてくれた。
「うち、母親の実家が代々続く茶道の家元でさ。ばあちゃんから小さい頃から着付けを覚えるように言われて育ったんだよね」
「へぇ、それは凄いな」
「勇大、着物似合うね。めっちゃかっこいいよ」
「そうかな……」
隆志が笑顔で言ってくれたが、七五三以来の着物に、勇大は戸惑う。
「あ、うちの家族、お盆だからばあちゃんちに泊まりに行ってていないんだよね。だから……うちに泊まってってよ……」
抱きついてくると、隆志は勇大の耳元で可愛らしくねだってきた。
「お……おう……」
勇大には、隆志が着物を着ているせいかいつもより色っぽさが増しているように感じられた。
早々と親に隆志の家に泊まる事を連絡すると、ふたりはお祭り会場へと出かけた。
イルミネーションが飾られる場所と同じところで開かれているお祭りには、多くの人で溢れていた。
ふたりは離れないようにと手を繋いで会場を歩き、お祭りを楽しんだ。
「お、勇大、隆志」
「勇大さん!隆志さん!」
すると、唯と晄に出くわした。
唯は着物、晄は甚平を着ていて、ふたりとも勇大たちを見つけると笑顔で近づいてきてくれた。
勇大と隆志はふたりの姿を見つけた瞬間慌てて手を離したが、気づかれなかった様だった。
「お前らも来てたのか」
「はい!オレが唯さんを誘ったんです!!勇大さん、隆志さん、着物かっこいいっすね!!」
「そう?ありがと!てか唯も着物、持ってたんだな」
「あぁ、うちの美容室のお客さんで呉服店の人がいるんだ。美容室で着付もやるから練習するのに着たりしてるんだよ」
「へぇ、そのカッコしてたら本当にサムライみたいだな」
4人はその後一緒に行動し、花火も一緒に見る事になった。
「オレ、いい場所知ってますよ!ちょっと歩きますけどそこで見ませんか?」
という晄の提案に乗り、勇大たちは少し歩いたところにあった埠頭に向かった。
人気があまりないそこで見る花火ははっきりと見えて綺麗だった。
「去年は雨で見られなかったから、今年は一緒に見られて良かった」
「そうだな」
「勇大さんたち、仲良いっすよね!キャプテンと副キャプテンだし、夫婦みたいです!!」
ふたりで話していると、晄が笑顔で話しかけてくる。
「夫婦って、オレ男だけど」
「でも隆志さん、いつもお母さんみたいですよ!勇大さんはお父さんって感じですし!!」
「ははは、隆志が母親で俺が父親なら、お前ら俺たちの子供だな」
「紫垣が兄貴で唯は弟ね」
「何でだよ!!」
『夫婦みたい』と晄に言われ、勇大は嬉しい気持ちになっていた。
花火が終わり、ふたりは唯たちと駅で別れて帰路についていた。
駅は同じような人たちで混雑し、電車もほぼ満員状態だった。
なんとか電車に乗ったふたりの距離は自然と近くなり、勇大は隆志の体調を気にしていた。
「大丈夫か?隆志」
「ん…大丈夫……」
壁際に隆志を立たせると、勇大はなんとかそれを守るように立っていた。
「勇大」
停車駅までこのままかもしれない。
そう思った時に、隆志が勇大に抱きついてくる。
「た、隆志、どうした?具合悪くなった?」
「……ううん、せっかくだからこうしたいなって思って」
「隆志……」
すぐ傍に大好きなその顔がある。
勇大は衝動に駆られて隆志にキスをしていた。
「んん……っ……!!」
舌を絡めながらきつく抱きしめると、お互いが昂っていくのを感じる。
「ん……はぁ……っ……」
着物の間から手を入れて下着越しにその中心に触れると、隆志はびくん、と身体を震わせた。
「隆志…いつもよりやらしく見える」
「それ…勇大もだから…」
息を切らして耳元で囁く声が愛おしい。
少し汗の滲む白い首筋も色っぽくて、勇大はそこに舌を這わせていた。
「やぁ……っ……」
「隆志、そんな声出されたら我慢出来なくなる……」
「勇大……っんんっ……!」
紅くなっていく隆志にキスをしながら自らの昂りを隆志の雄に擦り付ける。
触れあいたい。
もっともっといやらしい隆志の姿が見たい。
舌を絡ませてくる隆志にそんな思いが募っていく。
「あ……勇大……、これ以上されたら……っ……」
目を潤ませて話す隆志。
そこに、降車駅を告げるアナウンスが流れていた。
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