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「この前父さんから電話があったんだ。詳しい話は父さんが聞くだけ辛くなることだからって、あえて言われてないんだけど。でも、その、繁殖犬って知ってるか? ペットショップとかで売られてる子犬を産む親犬のことなんだけど、お腹に帝王切開の痕があったし、父さん曰く繁殖犬だったことは確からしい。その子を父さんが緊急で保護したと言ったんだ。大雨の日に」  何故かはわからない。だが呼ばなければいけないと思って、それが頭からこびりついて離れなかった。だから電話をしたと父は言っていた。 「父さんの言い方も気になったし、なんだか行かなければいけないような気がして、家も近いから見に行ったんだ。そしたらずっと眠っている小さな子がいた。元々父さんたちが飼っている猫たちが回りでじゃれて騒がしくしてるのに、ピクリとも動かない。ずっと身体を丸めて、目を開けもしなかった」  手を伸ばしてそっと触れてみても、動かない。弱弱しく目をあけるだけだった。 「もう気になって仕方なくて、そしたら父さんが抱っこさせてくれたんだけど、もうヨロヨロでおばあさんみたいでさ、抱っこしてもジッとしてるし、毛に艶もないし、抱っこしただけでものすごい抜けるし。なんか顔がもう、全部諦めてますみたいな、希望も何もない感じだった」  両目は見るからに白濁していて、聞けば予約待ちでまだ病院には連れて行っていないが、おそらく目は見えていないだろうとのことだった。餌もふやかしてやっと食べるが、それでも量は少なく、後ろの右足がおかしいのでヒョコヒョコとしか歩けない。 「雪也が言ったことも当然いっぱい考えた。諦めようとも思った。でも気になって仕方ないし、父さんの所に居る先住猫とあまり仲が良くなくて、猫にもストレスがかかってるみたいで。でも父さんの所を出すなら良くて保護団体、悪ければ殺処分だ。保護団体はともかくとして、殺処分だけは絶対にできない。世話の事も金の事も、俺なりに計算したし、覚悟もしてる。弥生先輩に相談したら〝家で飼うのは構わない。ただ本当に飼うなら、たまに構いに行かせてもらえたら嬉しい〟って言われた。さっきも言ったけど、絶対皆に迷惑はかけない。責任は全部俺が取る。だから、あの子を迎えさせてもらえないか」  皆に向かって深く頭を下げる由弦に、再び皆が顔を見合わせる。少しの沈黙の後、蒼がひとつ頷いた。 「事情は理解したよ。とりあえず、僕たちもその子に会いに行って良いかな? 雪ちゃんが言ったように、相手は大切な無二の命だから、飼うなら僕たちも覚悟を持ちたい」  蒼の言葉に「そうだね」と湊も賛同し、雪也や周も力強く頷いた。皆が由弦の話を真剣に受け止めてくれていることをヒシヒシと感じ取り、由弦はふいに泣きそうになる。 「ありがとう」  そして後日、時間を空けてくれた皆を連れて、由弦は実家へ向かった。

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