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第21話
「プール一緒に行った時、春樹トイレの個室に連れ込まれてたんです」
兄ちゃんが雄大の話しに耳を傾けてた。
「なんで言わなかった、春樹」
「兄ちゃん、ついていかなかった自分を責めそうだから...」
「その人によく似てたから勘違いしました、すみません」
と祐也を見た。冷たい眼差し。
「でもこれからは大丈夫です、俺が春樹のこと、守っていきますから」
雄大が僕を振り返り、微笑んだ。
突然、雄大に抱きしめられた。
「好きだ、春樹」
突然のことに言葉を失った。
「春樹」
兄ちゃんが立ち上がる。
「おかしいですか?男が男を好きになったら、春樹、すごく華奢なんです。
あの日、初めて気づきました」
「あの日...?」
と兄ちゃん。
「プールのトイレの個室から、春樹を助け出した日に春樹を抱きしめて。気づきました、俺がいなきゃ、て」
と言うと、雄大にキスされた。
と、その時、ビール片手にした、祐也が笑った。
「純情だねえ。お2人さん」
「春樹に二度と触れさせませんから」
雄大が冷たく祐也に言った。
「だったら兄貴の方、頂くかな、春樹がタイプなんだけど」
祐也が兄ちゃんに近づき、
「やめてよ!」
と僕は叫ぶや否や、
兄ちゃんが祐也を叩いた。
そして、抱きつかれている僕達に近づくと引き離し、僕を抱きしめた。
「祐也先輩だったのか?」
と聞いてきた。
「そうだって言っても信じてくれないでしょ」
泣きそうになりながら、てか、うっすら涙目だったんだけど。
「信じるよ、ごめん。春樹」
「兄ちゃん...」
僕達は見つめあった。
兄ちゃんが僕の頬を手のひらで包む。
優しいキスをくれた。
2人が固まってるのもつゆ知らず。
深いキスをした。
「お邪魔みたいよ、雄大、と、お前は誰」
航太さんだった。
「なんでお前」
と兄ちゃんが振り返る。
「雄大がお土産、持っていく、て言ったまま帰ってこない、てお袋から連絡あったからさ、鍵開けたまま、不用心なこった」
僕と兄ちゃん、お袋...?と固まってた。
「兄ちゃん、邪魔しないでよ」
と雄大。
「お前の弟...?」
「そっ、可愛いだろ」
と嫌がる雄大の肩を無理やり抱いた。
ふと、こないだ言ってた、気になる人、て...と思った。
「ほら、帰るぞ、雄大、あと、そこの知らん人も」
と、車あるから、と2人を航太さんが連れ出してくれ、
「あとは2人でごゆっくり」
ウインクして出ていった。
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