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第27話

23時過ぎた。 「夏樹ー、弟を落とす攻略法とかないの?」 バイトを終えたであろう夏樹に電話し、泣きついた。 「はあ?なにそれ」 後ろから、誰ー誰ーと、春樹の声がする。 「春樹には言うなよ」 「なにをだよ、訳わかんね」 と切られた。 ある日のこと。 雄大は友達と遊び行ってくる、と土曜日の休みに出かけたらしい。 母さんから聞いたのは夕方になった頃。 起きるのが遅かった上に溜まってた課題を済ませた後だった。 友達...春樹か。 あんま邪魔すんな、て言ってんのに。 春樹の電話は知らないので、夏樹に電話した。 「悪いな、邪魔しに来てるんだろ」 「なんの話し?」 「何って...雄大来てるんじゃ?」 「来てないけど」 えっ、となった。 「友達と遊び行く、て、てっきり春樹かと」 「友達が春樹だけな訳ないじゃん笑」 それはそうなんだけど...胸騒ぎがした。 雄大が帰宅したのは21時過ぎていた。 「こんな遅くまで何処行ってた」 玄関で待ち伏せしていた俺を雄大が睨みつける。 「兄ちゃんに関係ないだろ、てか、親か」 「兄貴だよ」 俺の横をすり抜ける。 微かにいい香りがした。 ボディソープ...? 「女といたのか」 「...」 雄大は俺が夏樹と付き合っていた事を知らない、ゲイだということも。 「男だよ」 「男と寝てきたのか」 「うるさいな!」 俺は嫉妬のあまり、口づけした。 手首を押さえつけ、無理やりなキス。 「タクヤさんかよ」 「なにすんだよ、兄弟だろ!」 俺を力ずくで振り払い、自分の部屋へ雄大は逃げた。 俺は雄大を追いかけた。 ドアを開けると、クッションが飛んできた。 「兄ちゃんも同じかよ!」 雄大は泣いていた。 俺はてっきり同意の上で寝たのかと思っていた。 「違うよ」 「なにが違うんだよ!クズ!変態!おたんこなす!」 泣きながら物を投げてくる。 「1人にしてよ!」 雄大がドアを閉めてしまい、抱きしめて慰めることも出来なかった。 多分、タクヤさんに無理やり、やられた上に俺に無理やりキスされ、混乱してるんだろう。 俺も自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んだ。 なかなか寝つけない夜だ。

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