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第28話

それからというもの、雄大に話しかけても無視された。 車で学校に送っていく、と言っても、歩いて行くからいい、と突っぱねられる。 俺は夏樹に電話し、春樹に変わってもらった。 「僕になにか用?」 「雄大に変わったことはない?」 「雄大に?んー...特にないけど。どうかしたの?」 「まー...ちょっと」 「上手くいってないの?雄大と」 「え」 「好きなんでしょ?雄大のこと。薄々勘づいてたよ」 後ろから、いつまで話してんだー、と夏樹の声。 兄弟揃って、焼きもちやきだ。 「気づかれてたか」 「うん、頑張ってね、航太さん。雄大になにかあったら教えるから」 「ありがと」 やっぱり春樹はいい奴だ。 「こんな時間まで何処に行ってたの」 雄大が学校から帰宅したのは20時過ぎだった為、母さんが尋ねた。 雄大はなにも言わない。 母さんがなにか言おうとしたので、 「彼女のとこだろ?」 と間に入ってやった。 雄大の大きな瞳が俺を凝視する。 雄大と2階に上がる途中、 「タクヤさんと仲直りしたから」 「仲直り...?」 「付き合うことになった」 俺は唖然とした。 「本気で言ってんの?お前」 「うん、タクヤさんに尋ねてみたら?」 そうして雄大は自分の部屋に消えた。 俺も自室に入るや否や、タクヤさんに連絡した。 「弟とどんな関係なんですか!?」 「バレてんか、付き合ってんで、て最近やけど」 「最近...?」 よくよく聞いたら、学校を休んで会ったりもしていたらしい。 「最初、無理やりだったんじゃないんですか?」 「それはちゃんと謝った上でやで。なんか言うてたん?雄大」 「別に...なにもないですけど」 「なら良かったわ」 全然、良くない...。 俺は雄大の部屋をノックした。 「お前、タクヤさんの仕事、知ってんのか」 「知ってるよ、ゲイビのモデル」 雄大は暗闇の中、ベッドに横になりスマホでゲームしていた。 「知ってたのか」 「兄ちゃんこそ」 俺は雄大が寝ているベッドの縁に腰掛けた。 「先輩だから、事務所の」 えっ、て顔で俺を見た。 その瞬間、スマホからゲームオーバーの声。 「兄ちゃんも...働いてんの...?」 「そ、18から。てか、お前、敵機にやられたぞ」 「知らなかった」 「そりゃ、知られたくはないからな。ゲイだなんて」 雄大が俺に釘付けだ。 「お前がタクヤさんを本気で好きなら仕方ないや」 雄大の手の中で止まっているゲームを取り上げて俺がやり出した。 「...わからない」 「なにが」 ゲームがぴゅいぴゅい音立てる。 「本気で好きかどうか」 「春樹を忘れたいからか?」 「...わからない」 スマホを雄大に返した。 「どうせなら春樹がしまった、て思うくらいの恋しろよ、タクヤさんでも構わない」 俺は雄大の部屋から出て、ベッドに突っ伏した。 やっぱり兄弟で恋愛、なんて無茶なんだ、と痛感した。

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