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第33話
「お前と夏樹が?珍しい」
「僕、雄大のこと好きになっちゃったかも」
えっ、と春樹を見ると、恥ずかしそうにモジモジしてた。
雄大を見ると、困った顔をしていた。
「ごめん、春樹...」
「嘘だよ」
春樹の笑顔に俺たち兄弟、
「えっ」
と見事にハモった。
「航太さんの反応、見てみたくて」
と春樹が俺を見た。
「でも喧嘩は本当。よくチャンネル争いや、テレビゲームしてるからテレビが見れない、て怒られる、すぐに仲直りするけど」
「平和なこった」
俺は思わず口にした。
えへへ、と春樹が笑う。
「...兄ちゃん、今、春樹が可愛いな、て顔した」
あ、と思った。
雄大が好きな春樹だ。
「俺より可愛い?ねえ、兄ちゃん」
「...お前、春樹が好きだったんじゃないの」
「とっくにケジメつけてます」
「タクヤさんは」
「とっくに別れてます」
「タクヤさん、て?」
春樹が雄大に尋ねた。
「ほら、居酒屋で奢ってくれた」
「あー...て良く見てなかったけど、関西弁の人かあ」
「兄ちゃんを嫉妬させようと付き合ったの、その前に兄ちゃんにキスされた、びっくりしたけど」
「話さなくていい!」
雄大がニヤニヤし始めた。
「じゃ...タクヤさて人としたの、エッチ」
「フェラされただけ。てか、兄ちゃんさあ、好きでもないのに、俺にキスしたんだって。酷くない」
「それは酷い」
春樹は自分が買ってきたプリンを食べ始めた。
「そういう訳じゃ...」
「どういう訳?」
雄大がまたつり目がちな大きな瞳で俺をにやにや。
春樹が目をまん丸にして俺を見る。
2人がかりで適わない。
「あーーー!ったく!好きだよ、好きだった!」
「...過去形?」
「諦めたつもりだったからさ」
「なんで」
「なんで、て、なんとなく」
「ゲイビ辞めたくないから?」
うっと言葉に詰まった。
「金になるんだよ。性処理もできて、一石二鳥なの」
俺は冷蔵庫からお茶を取りだし、飲んだ。
「サイテー」
「兄ちゃんは辞めたのに」
「春樹の兄ちゃんもやってたの?」
「うん、付き合うことになって辞めてくれた、頼んでないのに。凄いでしょ」
「兄ちゃん、元彼の爪の垢、飲ませてもらったら?」
相変わらず、生意気なやつ。
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