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第22話「玄関」
「藤崎ッ!!」
何度も名前を呼んでいるのにも関わらず、藤崎は義人のベルトを外しながら彼の左腕を床に押さえつけ、首筋にしきりにキスを繰り返している。
「お前興奮し過ぎッ!!離れろやめろ!!」
5限のイタリア語の授業は一緒に取っていた。
ふざけ半分に「将来もしかしたら住むし」と言って2人で選んだのだ。
義人は語学が好きで、たまに寝ている藤崎と違って真面目に授業を受けていた。それもあって、昼休みの最後に「サボって帰って佐藤くんを抱く」と言い出した藤崎の頭を数回殴り、何とか説得して5限に間に合わせた。
そして友人達と別れ、同居しているマンションに帰ってきた今、玄関の廊下に押し倒された義人は抗いつつも藤崎を受け入れてやるべきではないかと悩んでいる。
一応、我慢をさせてしまった訳だから。
「無理、本当に最高、何回思い出しても勃つ」
「何っなんだよお前のその勃起力は!!ヤバい薬でも飲んでんの!?マムシ!?スッポン!?」
「やだなあ佐藤くん。マムシとかスッポンって、赤ちゃん作る気満々な感じしない?佐藤くんが言うと全部エロいな」
「深妙な顔すんな、、っあ!」
ベルトが外された感覚がした。
「藤崎、ここではやめろ!!」
「ベッドまで保たない」
「コラ、!!」
ベロン、と耳を舐められて、間の抜けた声が出そうになった。
義人が言い放った言葉は藤崎を未だに有頂天にしている。余程嬉しかったのか、5限が終わって帰る事になった瞬間の藤崎は気持ちの悪い事にスキップをしていた。義人は藤崎がスキップをするところを初めて見たのだ。
そして引いた。
高身長で体付きの良い男のスキップは中々に気持ち悪かったからだ。
「ヤろ」
「ヤんない!」
先程からギンギンになっている藤崎の下半身には恐れ入る。
義人は未だに少し、大変な事をしでかしてしまった、と落ち込むのに藤崎は全く気にしていない。
「藤崎、今日は、、」
「ん?」
「ッ、、急にそう言う顔すんのやめて」
ん?、と言って覗き込む藤崎の顔は子供のように無邪気だった。
まるで不安がない。
「、、、」
「佐藤くん。ありがとう」
「え?」
ゆっくりとジッパーが下され、ズボンの隙間からひっそりと忍び込んでくる手に一瞬ビクッと肩を揺する。
暖かい手は義人のそれを包み込んでやわやわと触りながら、藤崎は床に右手を付いてこちらを見下ろしてきていた。
「ンッ」
「俺のこと、好きでいてくれて」
「あっ、、何言ってんの、お前」
くに、くに、とパンツ越しに亀頭をつままれる。その度に腰が揺れた。
藤崎に見下ろされながら感じるのは恥ずかしいけれど、義人は藤崎の前だからこそ乱れられる。
「嬉しかった。たくさん言い返してくれて」
「ぁンッ、んっ、、全部、悪口っ、だったんだけど」
「全部惚気だったよ」
「んあ、あっ!」
パンツがずり下ろされ、ぷるん、とそそり立った義人の性器が廊下の明かりの下に露わになった。
布が性器に擦れるのもひっかかるのも気持ちが良くて、義人は甘くていやらしい声を漏らす。
「あとは俺が何とかするし、大丈夫だから」
「あっあっあっ」
ちゅこちゅこと藤崎の左手が包んだ義人の性器を上下に擦り始める。
びくんびくんと身体がはね、無意識の内に腰をゆっくりと動かしている義人を見下ろして藤崎は愛しそうに彼を見つめた。
「気持ちいい?」
「あっ、ゆ、ゆっくりして、久遠、」
「名前で呼んでくれるの嬉しいよ、義人」
「んっ、んぅっ」
重ねた唇の隙間から、ぬるりと舌が侵入してくる。
「ッあ、」
義人は藤崎に舌を吸われるのがお気に入りだった。
それをやると義人が縋るように服を引っ張ってくるのが藤崎のお気に入りだった。
「ンッ、ふ、、ぇ、」
ぢゅう、と舌を吸いながら唇を離すと、今度は下唇を軽く何度か噛んでからもう一度舌を絡める。
「スイッチ入らないかなー」と藤崎が何度かそうやってキスをして、左手の中にある性器の先端から漏れた体液を亀頭に擦り付けるようにくるくると手のひらの中で先端だけを扱くと、思った通りに義人のえっちなスイッチがONになってしまった。
「あっ、んんッ、く、くお、んっ」
見上げて来る視線はとろんと溶けて、誘うように舌を差し出している。
「そうやってもっと淫乱ちゃんになっていいんだよ、義人」
藤崎は楽しげにそう言うと左手を義人の口元に持っていき、差し出された舌の上に中指と薬指を押し付けた。
「ぬるぬるにして」
「んっ、、?」
何をされるのか分からない訳ではないくせに、義人はその指にしゃぶりついてねっとりと舌を絡ませる。
「ん、いいよ」
「んっ、ぇっ」
引き抜かれた指を義人の下半身に持っていく。
藤崎は起き上がると、義人の履いていたズボンを脱がせてパンツを膝上まで下げ、グッと足を揃えて曲げさせて後ろの穴が見えやすい体制にし、濡れた指を穴にあてた。
「あッ、」
「ゆっくりね」
まずは中指が、つぷ、と少しずつ中に沈められていく。
「ああッ、、あ、」
右手は義人の曲げた脚を支えている。
「義人の穴、だいぶ入りやすくなったね」
「い、言わなくていい、かっ、、らっ」
ちゅぷぷ、と中指が第二関節まで中に入る。
「っはあ、、んっ」
異物感に堪らず、義人の穴がきゅう、きゅう、と藤崎の指を締め始めると、藤崎はそれを見て満足そうに笑って身体を強張らせた。
(ヤバい、ゾクゾクする)
1年間で教え込んだ様々な事を受け止め続けた義人の身体は、藤崎が何かするたびにいやらしく反応するようになっている。
間違いなく自分が作り上げた身体に、藤崎は言いようのない満足感を得ていた。
「義人、もう指全部入るよ」
つぷん、と最後まで指を入れる。
「はぁんっ」
クッと中で指を折り曲げると、義人のイイトコロに当たった。
そのまま前立腺を擦るように、トン、トンと腹の方へ規則的に指を曲げて伸ばしてを繰り返す。
「あっあっ、久遠、久遠っ!」
義人の胸が息を吸うたびに大きく膨らみ、忙しなく萎んでいく。ピンと勃った乳首が見えて、うっすらと開いた、顔を隠しながらもこちらを見つめる義人の黒い目と視線が絡まった。
「ねえ義人、乳首自分でいじって」
「はあッ!?わっ、あッんっ、、ん?何し、てんの?」
ちゅぷん、ちゅぷん、と指の出し入れを繰り返しながら、藤崎は玄関に落としていた自分のリュックを漁る。
「義人は自分の乳首を触りなさい」
「い、やだッ、あっ、んーッ!!」
喋っている最中に指を曲げられるのが嫌らしく、わざとそうやってくる藤崎に苛立って義人は足をばたつかせて抗議した。
そんなもの分かっていてやっているのだから、と抗議を無視して、漁ったリュックから目当てのものを見つけると掴んで出し、ちゅぽ、とその小さな容器の蓋を開けた。
「えっ?ひいっ!」
トロン、とした中身が溢れ、藤崎の指が出し入れされている義人の尻の辺りにぼたぼたと落ちる。
「こ、これッ」
「持ち歩き用ローション〜」
「何で持ち歩き用がっ、あっ、いるんだよッ!!馬鹿ッ!!んっ、もしかしてこないだの、んはっ、、やめろ喋ってんの!!」
垂れたローションを指で掬い、つぷぷぷぷぷ、とまた義人の後ろの穴に左手の中指を一気に奥まで沈ませる。
唾液と違って余計にぬるぬるになった肌は滑りが良い。
「こ、っ、こないだ、のっ、リュックの中に、何かっ、こぼしてたのって、んっ」
「あ、バレた?違うボトルに入れてたらフタの締まりが悪くて散乱しちゃったんだ、あれ」
「馬鹿たれッ!!あ、か、勝手に、2本目っ!」
中指と薬指、今度は2本合わせて穴にあてがわれ、何の断りもなしにゆっくりと侵入される。
「ぁあっ、や、めっ、!」
「義人はこれ好きだろ?」
「んうッ!」
奥まで入ると2本同時に指を曲げ、藤崎は義人が良がる、指がちょうど当たっている部分をぐっぐっと何度も押して擦った。
「はあッ、あっ、、そこ、ぉ、!」
途端に声は切なそうに呼吸が詰まったような響きになる。
「義人、乳首触ってるところ見せて」
「や、だッ、、いやだっ、あっ」
1年経っても、藤崎の前ではしたない事をしたくないと言う義人の意志は変わっていない。
基本的にシャイで、自分のそんな馬鹿みたいな事をしているところを見て喜ぶやつなんていないと思っているのも大きい。
けれど、藤崎はそう言うもので喜ぶ男だった。
「見たいなあ」
「んっ、んっ、じゃ、あ、」
「ん?」
義人は息苦しそうにビクビクと刺激を感じながら、強気な視線で藤崎を睨む。
「お前も、オナニー、してっ、そし、ら、、そしたら、する」
「いいよ。脚このままな?下げないで」
義人はあげられていた脚をそのままに維持して藤崎が右手で自分のベルトを外し、ズボンのジッパーを下ろしてパンツをずり下げ、ブルン、と出てきた勃起した性器を見つめる。
(でっか、、)
あんなものが毎晩のように自分の中に入っているのだ。
藤崎の性器を見るなり、義人の後ろの穴はきゅうっと力が入ってしまう。
あの大きくて太い肉の棒の感触を、1年間掛けてみっちりと覚えさせられた。
口でも、後ろの穴でも、手でも、太ももの隙間でも。
下手くそなりにフェラはできるようになり、慣らせば後ろの穴はすぐに藤崎のあれを飲み込んで奥まで突かれて良がれる。手コキもおずおずとしてしまうが仕込まれたうえ、バックが怖くてできなかったときは何回か後ろからの素股で「こうするだけだから、大丈夫だよ」と予行練習をさせられた。
「ッ、あ、あっ」
見ているだけで、その性器がどう入って来てどう動き、どこに当たるのかさえ覚えてしまっている。
「あっ!!」
藤崎の自慰を見ながら、義人は自分の乳首を両手でこねくり、高い声を出す。
人のを見ながらゆっくりするのは久々で、何かいつもよりもいやらしく感じられて興奮する。
「はんっ、あっ、、久遠、だめ、だめ」
「ダメじゃないよ、いいんだよ。気持ちいいんだよね?」
「あっ、んンッ、んっ」
左の乳首は摘み、右の乳首はこねこねと転がす。自分でも分かる。こんな馬鹿げた事はするもんじゃない。
それでも、藤崎に見られていると言う快感と、藤崎の自慰を見ていると言う快感で義人の勃起は治らなかった。
「気持ち良くなった?」
「あっ、気持ちいい、気持ち、いいけどッ、あっ、ちんこ、も触って、久遠っ」
そそり立った腰が揺れるたびにぷるんぷるんと動くそれが触られていないのは何かとても切なくなる。
「俺は義人のお尻の穴に指入れてて、自分のもシコってるんだよ?」
「ど、どうすればいい、?」
義人の目には涙が溜まっていた。
「自分で触って、義人」
「あ、んっ、、こお?」
左手は相変わらず乳首をこねていて、伸ばした右手が自分のぐじゅぐじゅになった性器を包む。ゆっくり上下に扱き始めると、堪らない甘い刺激が腰をつんざいて行った。
「アッ、あぅ、あっ!」
手が止まらない。
(出したい、、出したい、イキたい)
コスコスと親指と中指で作ったリングで性器を根本から先端まで絞る。
腰はそれに合わせて動きながら、藤崎の指が曲がるたびに跳ねた。
「ぁンッんっんっんッ!んんッ!」
「義人、ちゃんと言わないなら止めるよ?」
「あっ、違う、違うからッ、ンッ」
いつものおねだりを忘れていた訳じゃない。
藤崎にそう言って欲しかっただけだ。
「イキそう?」
「も、少し、」
「じゃあ俺の入れていい?」
「ッ、、い、今?」
恥ずかしそうに、切なそうに細められる目を藤崎は見つめる。
十分に刺激してパンパンに張り詰めた自分の性器をさっさと義人の穴に入れたかった。
「ダメ?」
「あん、っ」
ぐりゅ、とそばに寄った藤崎のそれが指の抜かれた穴に擦り付けられる。
その性器がどんな風に中に入って来るのかを考えただけで、義人はもうイキそうになっていた。
「今、入れたら、、入れたときに、イキ、そう」
ゆるゆると自分の性器を刺激しながら、義人は脚越しに藤崎を見上げている。
「じゃあ今言って」
「や、やだ、」
「やだ?」
「あっ、ぅ、、ん、ひっ」
ぬるん、ぬるん、とローションで滑るそれの先端が何度も穴をかすっていく。
「アッ、やめっ、それダメ、ッやあ、!」
「入れたい」
「んッ」
ローションと一緒にリュックから出し、床に雑に落としていたコンドームを拾うと、藤崎は無言でそれを開けて自身に装着する。
それからもう一度ローションを義人の穴に垂らし、自分のそれを擦り付けながら慣らした。
「ンッ、んっ、、ダメ、久遠、欲しい」
先程から、義人の濡れそぼった穴は小さく動いている。
「言える?」
「んふっ、、んっ、、あ、」
ぴと、と藤崎の性器が義人の穴に入れる角度で密着した。
「い、、イキたい、、久遠、イっていい?」
その台詞がやっと聞こえて、藤崎は義人の膝を抱え込みながら覆い被さり、あてがった性器をゆっくりと義人の中に沈める。
「いいよ」
「ッッあ"」
ズブンッ、と奥まで一気に入ってくる。
「あっあっ、、あ、ぁあああッ!」
入った衝撃と快感で、義人がじわじわと絶頂していく。
「可愛い、可愛いよ、義人ッ」
「んぇ、あッ!!」
だらしなく舌を出しながら、必死にしている呼吸の音が聞こえる。
ガンガンと奥に向かって腰を振ると、イっている最中の義人は更に卑猥な声を上げた。
「ぇえッん、んぅッ、あっ、ンあッ」
自分の性器を擦る手が速くなり、次の瞬間には顔まで精液を飛ばしてイってしまった。
「あぁあッ、、あっ、んうッ!」
「はあっ、ハアッ、、ごめんね、俺がイクまで、頑張って」
「だめ、ダメダメダメッ!あッ、だめッ」
ほとんど回っていない呂律で拒否されながらも、藤崎はそのまま腰を動かしている。
イったばかりの後ろの穴は緩いが、段々とまた藤崎のそれを入り口が締め付け始め、義人の喘ぎ声は激しくなっていった。
「また、またイクッ、いっ、、久遠、ダメだッ」
「義人、好きだよ、義人」
「す、好きッ、好き、久遠っ、イク!!」
「気持ちいい?」
「気持ちいッ、あっ、イク、イっていいッ?あっ、あっ!」
「何回でも、ッいいよ。俺も気持ちいい、!」
「ん、ご、ごめ、アッああっ!!」
ビュ、と精液は今度はへそまで飛んだ。
藤崎もほぼ同時に絶頂し、義人の中でコンドームに向かって射精し終える。
「はあ、はあっ、、はあっ」
「はあ、、ん、ごめん、玄関でして、」
「ンッ、、謝るの、遅い、、あっ!」
ズル、と藤崎が性器を引き抜く。
2人して肩で息をしながら、夢中でセックスしてしまった玄関の惨状を確認した。
床にローションがたっぷりと垂れていて、義人は顔まで精液が飛んでいる。
玄関に置いておいた靴は四方八方に分散しており、藤崎のリュックに至っては中身が半分程雪崩出ていた。
「とりあえず、、ティッシュ取ってくる」
「早くして、腰痛い」
「色気ねえ〜」
「十分頑張った!俺にしては!!」
精液の溜まったコンドームをつけたまま、藤崎はティッシュを取りにリビングに向かう。
義人はそれを廊下でゴロゴロしながら眺めつつ、眠くて目をしばしばとさせていた。
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