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第42話「洗浄」

そうして座った義人の右足を藤崎が持ち上げた。 「わっ、」 「ん」 「え、ちょっ!!ッあ、!」 体制を崩しそうになった義人はそれよりも目の前の出来事に目を丸くする。 べろ、と、つま先を舐められたのだ。 「な、なに!?何してんの!」 慌てて足を引こうとしたが、思っていたよりも藤崎が踵を掴む力が強く、一向に脚が自分の元へ戻ってこない。 「ちょっと我慢。ね?」 「え!?あっ!、ん、んっ!」 見上げてくる藤崎と視線を絡める。 熱の籠った、誘惑に似た視線をこちらに向けたまま、持ち上げた足を舐め回して、藤崎が足の指を口に入れる。 「あっ」 ぬるりとした暖かい舌の感触が、指を包み込んだ。 指の間にも舌を入れられ、あますところなく舐められていく。 「あっ、く、おんっ!何、してんの、、?」 もうそれすらも気持ち良い。 加えて、見上げながら足を舐める藤崎に欲情してしまい、義人は抵抗できない。 「掃除」 短くそう言うと、今度は反対側の足を持ち上げて舐めだす。 「全部」とは言ったけれど、その辺は別に菅原に触られていないのに。 それを言っても藤崎は自分が納得するまで止める気はないらしく、左足も丁寧に舐め上げると今度はふくらはぎや脛を舐め、徐々に上に上がってくる。 グッと足を持ち上げられて膝の裏を舐められる頃には、義人の性器は完全に勃起し、彼が感じて身を捩るたびにぷるんっと藤崎の目の前で揺れる。 「はあっ、、はあっ、、」 「気持ちいい?」 「んっ、ばか、今喋るなっ」 「ん、ごめん」 ニコリと笑う顔が見えたが、目は笑っていない。 (このまま食べられそう) そう思わせる力強い視線は、誘惑してくる妙ないやらしさを絡めている。 目が合うたびにドクンドクンと鼓動がうるさくなっていく。 人の唇や舌が身体に触れるだけでこんなにも気持ちいいのかと、義人は自分の勃起した性器を隠しもせずに脚を広げて藤崎に見せた。 「あ、んんっ、ンッ」 「義人」 名前を呼ばれて閉じていた目を開くと、右の太ももに舌を這わせる藤崎と目があった。 彼の右手は義人の左の内腿を、触れるか触れないかと言う具合で指先で撫でている。 「ぁんっ、、な、なに?」 「勃ってる」 「はんっ!ん、い、言わなくていいだろ!」 立ち上がったそれを指先でピン、と弾かれ、漏れ出た声が恥ずかしくてキツく言い返せば、くつくつと笑われた。 そうすると今度はまた太ももを撫でられ始めて、開いていた足の間に、藤崎の頭が入ってくる。 「っあ、し、シて、久遠、」 我慢できず、義人は腰をくねらせる。 その誘い方のぎこちなく、慣れない雰囲気に藤崎は自分のそれがピク、と反応するのを感じた。 「ダメだよ」 目の前で美味しそうに揺れる義人の性器は、人のものをまざまざと見た事はないがそれなりの大きさをしている。 けれどこれはどの女にも突っ込まれた事がないのだ。 (クソ菅原、、思い出すだけで殺してやりたくなる) その事実が好きだったのに。 藤崎しか触れた事のない聖域を汚されたのだと思い出すと、ほんの少しだが義人に八つ当たりしたくなり、意地悪をしてしまう。 「フェラはダメ。後でね。今は義人をキレイにするのが先」 「んっ!」 ちゅう、と内股にキツく吸い付かれる。そのまままた、べろべろと身体を舐められ続けた。 口でして欲しいのに性器に触れてすら貰えない義人は切なくて苦しくなり、身体を支えていた手をそちらに伸ばしてしまった。 「こら」 「あ、ぁあっ、」 触れる寸前で手を掴まれ、クン、と腰が揺れる。 今度は捕まえられた手を執拗に舐められて義人は切ない声を上げた。 「んっ、やめ、て」 どこを舐められても感じるなんて、全身がいやらしいものになってしまったように思えた義人は泣きそうな顔を藤崎に向ける。 「今何しようとしたの?」 「ち、ちんこ、したいっ、痛くてつらいから、!」 「ちんこで何がしたいの?」 一瞬も触ってもらえないそれを見つめて、顔を真っ赤にしながら義人はまたクン、と腰を揺らす。 もはや無意識に動いてしまっているようだ。 「ねえ、それ何してるの?」 「ぁあんっ」 ピン、と性器に軽くデコピンをされ、義人は甘ったるい声を浴室に響かせた。 暖かい部屋の中で頭はボーッとしている。 はあ、はあ、と荒く呼吸をし、高鳴りっぱなしの激しい鼓動が彼の理性をどんどん崩していた。 「お、なにー、したい」 触ってもいないのに、藤崎に勃起したそれを見られるだけで腰が跳ねた。 「ふーん、、パンパンに勃ってるね」 「っあ、そ、んな、ァアッ」 笑いながら藤崎は義人のそれに息を吹きかけてくる。それだけだと言うのに興奮し切って頭が回っていない彼はビクッビクッと痙攣したかのように感じて腰を浮かせる。 面白がった藤崎は一度だけ、じゅぽ、と性器を急に喉の奥まで咥えた。 「ぁああッ!やあッ、く、久遠、後でじゃ、ないのかよ、ぁ、ひっ!」 にゅぷぷぷぷ、と吸い上げながら亀頭の辺りまで口から出すと、ぱっと性器から口を離されてしまった。 「えっ、?」 甘い快感は途端に消え、また触ってもらえない義人の性器は彼が藤崎の手の感触で感じるたびにぷるんぷるんと揺れる。 何もしてないとでも言いたげに、太ももを舐め回してキスをしてくる藤崎に、義人は不安そうな声で問いかけた。 「久遠、、?」 「んー?」 いつの間にか性器に触れないようにしながら、脚の付け根や脇腹、下っ腹に口付けられている。 「何で、してくれないの、、さっき、フェラしたじゃん」 そう聞くと、何のこと?と言った感じの顔で藤崎は義人を見上げた。 それは酷く涼しげでわざとらしく、むかつく顔だった。 「したっけ?」 「今しただろ、、今さっき」 「忘れた」 藤崎は段々と身体を起こしながら、腹や胸に付けられたキスマークの上に舌を這わせ、それが一通り終わると、今度は鬱血したそこに再度キスしてチュッとキツく吸い上げ始める。 「いっ、た」 「後なんだろ?」 「え?」 嫌味ったらしい笑みが義人を見上げていた。 「後でって、義人が言ったんだよ」 「言って、ないよ、、」 チュッ、チュッ、と菅原のキスマークが藤崎に書き換えられていく。 その光景があまりにも愛しくて、義人は思わず視線を細めてキュッと下唇を軽く噛んだ。 (嬉しい、、久遠のものに戻ってく) 一度も違う人間のものになった事などないが、それでも義人はそう思い、嬉しさが込み上げた。 「言ったよ」 「言ってないって、ンッ」 「へえ。でも俺、先に義人を綺麗にしないと。だから、ごめんね」 「えっ?」 腹と胸にあったキスマークが終わると、内股にあった何個かも上書きされる。 それからまた立ち上がって、今度は右手の乳首をぴんっと指で弾かれた。 「あっ、!」 「こんなに噛まれたの?、、痛そう」 乳輪についたくっきりとした歯形を見て、藤崎の表情が歪んだ。 「久遠も、」 「え?」 「久遠も噛んで」 「っ、、」 甘美な誘惑が聞こえた。 屈んだ藤崎を見上げる直ぐそこにある義人のとろんととろけた顔は、今すぐにでも襲ってめちゃくちゃにしたくなる程可愛くて扇情的だった。 「痛くして」 「義人にそんなことしたくない」 藤崎の性器ももう既にパンパンに勃起している。 「して、ここだけだから」 義人の立ち上がったそれから、ダラダラと先走りの精液がこぼれ落ちていく。 (本当に、1年でこんなにエロくなると思わなかった) 最近藤崎が義人を抱くのが我慢できなくなったのは、大体がこの妙に身につけてしまった彼自身の色香の所為だった。 今もこうして藤崎を煽り、意地悪してやろうと触りもしないそこにしゃぶりつきたくなる程彼を振り回して夢中にさせてくる。 (やらしくなっちゃったなあ) これで実際に触ると驚く程ウブで初々しい反応が返ってくるのだから、自分は本当に周りの男に気を付けなければならないな、と藤崎は改めてここで決意した。 「痛いのが良いの?」 「藤崎の痛いのに変えて欲しい」 「ん、」 菅原から受けた苦痛を、藤崎の甘い痛みに変えて欲しい。 義人はただそれだけが欲しかった。 彼の前にかがみ込み浴槽のふちを掴むと、藤崎はピンク色の乳首のある乳輪に歯を立てる。 「噛むよ」 ひと言そう告げてからゆっくりと口を閉じ、肌に噛みつきながら口の中に入った乳首を舌でこね、いじり回して刺激した。 「あっんんんぅ、いっ、いた、あっ」 胸元にある藤崎の頭を抱え、髪に頬を擦り寄せながら義人はピンと両脚を伸ばす。 痛みもあるが何より火照った身体へのその刺激は、小さくても全身を駆け抜けて義人の脳を溶かすようだった。 「だ、ダメ、あっ、い、イクッ、イクッ」 「ん?」 「イッ、き、たい、、くお、んっ」 「イッちゃダメだよ」 最後にギチっとキツく噛み跡を付けると、義人は痛みで絶頂が遠のいた。 「はあっはあっ、はあっ」 赤く染まった頬の顔はのぼせたようにぼんやりしている。 「おっぱい気持ち良かった?」 「お、おっぱいじゃ、ないッ」 絶頂しかけてカタカタと震える義人の脚を藤崎は楽しそうに何度も撫でてそこにしゃがみ込む。 再び義人を見上げながら、彼はニコ、と優しく笑ってまたふーっと性器に息を吹きかけた。 「んんんっ!」 「おっぱいはおっぱいでしょ、男の子でも」 ふーっ、ふーっと息が続き、義人は敏感になった性器の肌に風が当たるたびにぴくんっぴくんっと腰を揺らして藤崎に見せつける。 「すごいね、これだけでこんなに我慢汁出たの?」 既に玉袋までつたった義人の我慢汁を眺めて、藤崎は満足そうに笑った。 「ンッ、、久遠」 切なく名前が呼ばれ、彼は義人を見上げて「ん?」と首を傾げる。 もう八つ当たり等ではなく、セックスのときだけたまに出る藤崎の「義人をいじめたい」と言う性癖が故の行動だった。 「も、フェラ、してッ」 目に涙を溜めながら、義人は強く懇願する。 「フェラってなに?」 「ッ!、、もういい、じゃあ自分でするから邪魔すんなッ!」 いじめられ過ぎて怒った義人は右手で自分のそれを掴み、ゆっくりと先端から根本まで撫で上げ、その刺激に呼吸を荒くした。 「はあ、はあ、、あっ、」 けれどいくら前を触っても、先程からキュンキュンと締めたり緩めたりを無意識に繰り返している後ろが切なくて仕方ない。 (穴、触りたい) まだそこや背中にも「上書き」をされていないのだ。 「く、久遠」 「ん?」 義人が自分で扱く義人の性器を、その目の前に座って足の間からじっと見ていた藤崎は名前を呼ばれて彼を見上げた。 「あの、、後ろ、」 「後ろが?」 「後ろ、も、、触られたから、触って、欲しい」 「じゃあ、ここに手ついてお尻突き出して」 義人が座っていた浴槽の縁をまたコンコンと叩き、藤崎は笑って彼にそう言った。 一瞬戸惑った義人だったが、性欲に負けて情けなくも浴槽の縁から尻を上げ、くるりと後ろを向くと今度は座っていたそこに手をついて藤崎に尻を突き出した。 それは普段の彼からは考えられない程乱れた姿で、彼自身が恥ずかしくて仕方のない体制だった。 「可愛い」 (あ、可愛い、も、、上書きされた) 藤崎の発した言葉に密かに笑みをこぼした瞬間、ぬるっとした感触が後ろの穴に当たる。 「は、ぁッ!?」 閉じてシワの寄っているその穴を、藤崎がねっとりとした舌で舐め上げたのだ。 「あ、ぁあっ、ひんっ」 何度もされているくせに、これだけは1番慣れが来ない。 ゾワゾワと全身に鳥肌が立って、恋人にいけない事をさせてしまっていると、何故か背徳感まで覚える。 「久遠っ、ああっ、だ、ダメぇッ」 ガクガクガクガク、脚が震えて力が抜けそうになった。 舌の表面で、裏で、ぬりぬりと往復してそこを舐められると、ビクンビクンと身体が反応する。 「これは?」 「あっ、!!」 ぐりゅ、と舌先で穴をほじられ、途端に義人は突っ張っていた腕に力が入らなくなり、折れてガクンと浴槽のふちに上半身を乗せる。 「っだめ、それダメだって、ぁ、あっあっあっ、すごい、ダメぇ、、すごい、からあッ」 甘くて怠くて体がふらつく。 力を抜くとぬぷっ、と穴の中に入ってきそうになる舌を必死に拒んで、義人は尻に力を入れて穴を閉じた。 「んー、、?」 どのくらいだろうか。 飽きる事がないのか、藤崎は執拗にそこを舐め続け、義人の反応が小さくなってくると左手を前に伸ばして、勃起しながらタラタラと濡れた床に我慢汁を垂らしている義人の性器の根っこを掴んだ。 「ぁあんっ!」 グン、と一瞬、彼の体が弓形に反って伸びた。 「ダメ、イク、今そこ触ったら、イク!」 浴室に義人の声が響いて、藤崎は後ろの穴を吸ってからまたほじり始め、触れた性器も容赦なく扱き始める。 「あーっ、あ、あああ、!」 義人の腰が、まるで後ろから誰かにガンガンと突かれているかのように小刻みに前後に揺れ始めた。 (久遠のが欲しい、後ろ、入れて欲しい) 無意識に揺らし出した腰を見て自分の唾液を左手の中指に絡ませると、藤崎は目の前に突き出されたその穴の入り口に指をつけ、少し下を目指しながら穴をこじ開けるように力を入れた。 「ッあ、」 違和感に気が付いた義人は、どうしても早く奥まで指を入れて欲しくなり、力の入らない腕を後ろへ回して自分の尻の右側を掴み、グッと外に肉を開いて後ろの穴を広げた。 (こんなのどこで覚えてくるの) 肩越しに義人は藤崎を振り向き、無言のまま「入れて」と言う顔をしてくる。 それを見て唾を飲むと、藤崎はくぱ、と開けられた穴に指をゆっくりと差し込んだ。 「あ、あ、あ、、あーー、、あっ」 肉の壁を押し広げて藤崎の指が奥へと侵入してくる。 自分だけで自慰をしても届かない深いところまで入れられると、途端にきゅっと穴が締まった。 「えっちになったね」 「あ、あ、あ、あ、あっあっあっ」 にゅぷ、にゅぷ、にゅぷ 指は規則的に穴から出し入れされる。 「あ、イク、イク、久遠っ、」 まだ出し入れするだけならいいけれど、指を曲げて前立腺を擦られたら確実に数秒と保たずに絶頂してしまうと思って、義人は必死に藤崎を呼んだ。 「2本にしていい?」 「くお、おっ、聞いてッ、久遠きい、てえっ!」 あっという間に2本目の指が尻の穴に突っ込まれる。 くぷっ くぷっ  ぬぶっ 「い、クッ、イク、イキたい、イキたいッ」 懇願なんてしなくてももうあと数秒でイってしまいそうだ。 「久遠、イッて、いい?イッ、いいいっ、!」 「いいよ。可愛い、義人。ちゃんと聞けたね」 「あっ、イッ、く、よ?いっ、あっ!」 「うん、見せて。見てるよ」 後ろから腰を曲げて義人に覆い被さると、2本に増やした指を穴の中で腹の方へ曲げ、ぐんっぐんっとそこを押すように撫でる。 それを繰り返しながら義人の性器の亀頭を手のひらで擦るようにぐるぐると手を回しながら刺激すると、義人は悲鳴のような嬌声を上げた。 「いっ!!!あ、あぁあああッ、だめ、ンアっ、あああッ!!」 ぎゅううう、と穴に入れている指がキツく締め上げられると、義人は浴槽の表面まで精液を飛ばした。 荒く呼吸する後ろ姿を眺めながら義人の脇の下から両腕を入れ、抱き起こしながら藤崎は後ろから彼の身体を抱きしめた。 力の入らない身体を支え、浴室の壁によりかかる為に背中を付けると、ヒヤッと冷たい表面に一瞬驚く。 「はあっ、はあっ、ん、、はあ、はあっ」 「可愛い。可愛過ぎる」 「あ?、はあ、はあ」 満足そうに義人の身体を抱きしめながら頭をすりすりと擦り合わせてくる藤崎をうざがり、義人は低い声を漏らした。 「ふ、藤崎、ここ、暑い」 「あ、のぼせちゃうね。大変大変」 しぼんだ義人の性器にシャワーを当てて精液を洗い流し、彼の背中にキスをしながら全身に一度お湯をかける。 「頭洗ったら出よ」 「ん、、」 藤崎の勃起したままのそれをチラチラと見ながら、結局義人は藤崎と頭を洗い合って、それをさっさと済ませると2人して脱衣所に雪崩出た。 すっかり温まった身体は、浴室にいすぎて目眩がする程だった。

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