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第59話「熟知」
触れるだけのキスのあと、すぐに舌を絡めて義人を攻めるようなキスをした。
「んっ、んむっ、」
「ん、、、はあ、」
「んーッ!んんん!!」
イッたばかりで息を整えたかったのか、バシッ!と肩を叩かれたところで藤崎は唇を離す。
「っう、はあっ、、はあっ、、アホ!死ぬ!」
「いや、はあ、、俺いける」
「お前じゃなくて俺が死ぬ!酸欠で!」
上から退けと肩を殴られ続けているが、藤崎は少し考えるような顔をしてから退かずに義人を見下ろした。
「このまま、話していい?」
「抜けよ!」
真っ赤な顔で荒く呼吸しながら、ギャン!と怒る義人は睨むように藤崎を見る。
「うーん、でももう勃ってきたし」
「あっ、わっ!」
一瞬引いた腰を、トン、と奥に届くように義人の穴に当てると、ビクッと入り口が締まった。
「ンンッ!う、復活、はや!」
「あっはっはっ!あのさあ」
「え、急に?え?なに、んっ」
「ちょっと待ってやっぱゴム変える」
そのまま抜いてろ、と言ったが聞く訳のない藤崎はたっぷり精液の溜まったゴムをスッと自分のそれから抜き、口を器用に結ぶ。
少し萎えた性器を左手で扱いてまた太く硬くし、新しいゴムの袋を開けてそれを付け直した。
「え?え?」
あまりにも慣れた手つきに、そう言えば結局自分は童貞のままだなあと呑気に考え、ゴムを付けた事すらない事実に、義人は今更ながら気がつく。
(今度習おうかなあ、、でも必要ないか?)
そうこう考えている内にぴと、とまた穴に性器があてがわれる感触がした。
「考えごと?余裕だね。やっぱあと6回は抱く」
「待った何の話それ!」
「中入れてよ、あったかくして」
「アッ、ぅ、、ううっ、んっ、あ、はいっ、、入っちゃ、あんんっ」
息をする暇がない程の質量が、再び義人のそこにゆっくり、ゆっくりと絶対に傷付けないように奥へ入ってくる。
「義人、あのね」
「待って待って、ああっ、あっ」
逃げて枕を掴み、爪を立てていた手を藤崎に掴まれて肩まで引き摺り下ろされた。
無理矢理手を開かれると向こうの大きな手と指を絡められ、両手にも藤崎の体重がのしかかって来る。
ゆるゆると腰を動かし刺激を最小限にしながらも、藤崎は少し苦しそうに口を開いた。
「義人は真面目すぎて、時々いらないのに謝るよね?」
「っ、え?」
微かに目を開き、辛そうに表情を歪める藤崎を見上げる。
「アレ、やめて。相手は俺なんだから、変に気遣わないで、緊張しないで良い」
「んっ、んっ」
何を言っているのだろうと必死に頭の中を回転させていく。
「それから、たくさん謝って反省したのに、自分を傷つけてまで反省してるんだって見せようとしなくていい」
これは多分、普段から「ごめん」が多い自分への直して欲しいと言う申し出と、昨日の「痛くして」の続きだ。
「義人が義人を傷つける。それは、俺が一番してほしくないことだよ」
義人は自分に自虐癖があると言うのは、藤崎に胸を擦るのを止められるようになってから何となく分かっていた。
しかしそのせいでここまで藤崎が傷付いているとは流石に義人も知らないでいて、突然ポツポツと始まったこの会話に目を丸くしている。
「義人、もう1つ言っとく」
「んっ、んっ?」
真剣な目だった。
「俺はね、義人といられるならゲイってバレてもいい」
「っ、!」
それは2人でも散々話してきたけれど、お互いの意見を最後まで言うのはやめようと遠回しにしてきた問題でもあった。
「ただ、今は義人がそれを嫌がってるし、何より、菅原さんが脅したように、周りに迷惑がかかるかもしれない」
「んんっ、うん、んっ」
「俺の家族はそんなんへっちゃらで生きてく自由人ばっかだけど、義人の家は真面目な人ばっかりだろうから、きっと迷惑になってしまう」
握り合った手にお互いに力が入っていった。
何があっても離れたくない。
そう言い合っているように。
「今はいい。無理に言わなくていいし、言えっていうルールもない。でもいつか、」
グッと切なそうに細められた目が、義人の黒い瞳を見つめていた。
「いつかでいいから、胸を張って、俺を好きだって言って」
「愛してる」と声に出されなくても、義人が自分の元にいる限り、誰より優しく味方をする。誰にも守れないところだって守る。
そんな想いでいる藤崎が、唯一持っている願いが溢れ、義人はその言葉に奥歯を噛み締めた。
「俺はいつでも言える。義人が好きだ。心の底から、愛してる。誰よりも、世界で一番、大切で、愛してる」
手に込められる力と同じだけ、胸が締め付けられて苦しかった。
「今に満足してないんじゃない。でも、あんな脅しがきかないくらい、愛し合いたい」
いつも「別れるかもしれないから」と頭に置いて物事を進めてきた自分が、馬鹿みたいに思える。
世界で1番愛してる男が、こんなにも自分を求めているのだから、怖がらなくてもいいのに、と。
「いつかでいいから、俺達の関係が、義人の中で苦にならないくらい、深くなりたい」
「うん、、うん」
義人の目尻から涙が落ちて、枕にポタポタ音を立てて染み込んでいった。
「それは、ダメかな」
はあ、と甘くて切ない吐息が聞こえる。
室内はいつもより少しだけ暖かくて、2人はどろどろに汗をかいていた。
「ううん、ダメ、なんかじゃない、」
のぼせたように頬を赤く染めた義人は、滲む視界から涙を追い出し、藤崎を真っ直ぐ見上げる。
愛し合う、は難しいけれど、愛し合い続ける未来は、彼にも少しは見えてきていた。
「ごめん。っん、、まだ、その日の事を想像できない。でも、いつかちゃんと、大声で、久遠が、あっ、、久遠が好きだって、胸を張って言えるようになるから」
その言葉を聞いて、ぐ、と藤崎の唇が近づいて軽くキスをされる。
同じくらいの体温が触れ合い、お互いの唇は湿っていた。
「待ってて、欲しい、ッ、俺が、勇気が出るまで、、ごめ、」
「謝らないで」
鼻先を擦り合わせてから、一瞬だけ舌の絡むキスをされる。
「っん、待ってて、くれる?」
「待ってるよ」
「んっ、、ありがとう」
ごめんと言うと、悪い気が増すようだった。
けれど、ありがとうと言うと、相手も笑ってくれる。
「久遠、ンッ」
「ん?」
「まだ、勃って、る?」
義人は顔を真っ赤にしながら自分の下半身を見下ろし、藤崎に聞いた。
「泣いてる義人が可愛すぎて、めちゃくちゃ勃ったよ、ホラ」
パンッ!
「ぅ、あんッ!」
肌と肌がぶつかり合うと、義人の腹の裏側を藤崎のそれがゴリッと強く擦り上げていく。
「どうしたの?」
「い、、イかせて」
見下ろした先の自分の性器からはぐちゃぐちゃに溢れた精液が滴って下っ腹を汚している。
その言葉に藤崎は困ったように笑い、義人の右手を強く握って、自分の右手で彼の腰を上から強く押さえつけた。
「アッ、」
「可愛い」
「あっ、んっんっんっんんッ、だめ、あああッ!」
すぐに激しく穴の中を擦られ、義人は意識が遠のきそうになりながらも自由に動かせる左手で自分の性器を握る。
「可愛い、自分でするの?んっ、んっ!」
「あっ、する、するうッ、ああっ、んっ、出る、出るッ、気持ちいいっ」
(先っぽが好きなんだよなあ)
鬼頭のすぐ下の裏筋を中指で押しながら、人差し指と親指で尿道の入り口を器用に摘んでいる。
義人がよくやる自慰の仕方すら覚えてしまっている藤崎は、それを眺めながら奥歯で軽く自分の舌を噛んだ。
(可愛い)
自分の動きに合わせて義人が微妙に腰を動かしている姿も全て愛しくて仕方がない。
「っん、ねえ、それ、何するの?」
「あっ、はあっんっ、しゃ、せ、んっ、射精っ、するッ」
「いいね。見てていい?」
パンッパンッパンッパンッ
寝室にずっと卑猥な音が響いている。
カーテン越しの月明かりはぼんやりとしていて美しく、義人の白い身体を間接照明のオレンジの明かりよりも美しく照らしていた。
「み、ててえッ、イクの、見てて、あっあっあっあっあっ」
いつの間にか無我夢中で自分の性器を擦り上げ、ビクンビクンと腰をくねらせている。
「可愛い、義人、可愛い」
「で、、る、、、んんんんぁあっ!」
熱いものが自分の中から徐々に抜けていく。
あまりにも気持ちが良くて、上手く息ができない。
そこでプツッと、意識が途切れた。
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