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第10話

それから、セイヤさんは週に2日のペースで来店し、俺を指名した。 ただ...やっぱり何もしては来ない。 山のようにお菓子や飲み物をみんなで分けて、と持ってきてくれ、みんなセイヤさんが来る度、俺に群がった。 そして。シュンが指名された。 めちゃくちゃ緊張しているのがわかった。 肩を抱かれ、部屋に入るとしばらくして小さな喘ぎ声が聞こえた。 マコを見ると、親指の爪をカミカミしてた。 目が合ってしまい、 「なに」 と詰め寄られた。 ちょっとおちょくっただけなんだけど、俺をライバル視してるみたいだ。 「いや、心配してんのかな、て」 「そりゃ当たり前でしょ、タチだったのに...大丈夫かな、変なことされてないかな...」 しかめっ面で閉まっているドアを睨みつけている。 「変なこと」 俺はプリンの蓋をペリッと捲ると、右手にあったスプーンと同時にマコに取り上げられ、あ!と言ったが、 「大丈夫かなあ...」 勝手に食べ始めた。 「大丈夫だよ、うちの客、変なのいた試しはないし」 「どうだか、言わないだけなんじゃ」 俺のプリン食べ、あんあん聞こえるドアを見つめてる。 「オーナーの息子なんでしょ。開けて見てもいい」 「はあ?ダメに決まってる」 とプリンとスプーンを取り返し食べた。 「なんでだよ、あいつにもしもの事があったら」 とまたプリン奪われた。 「ないから」 「あるから」 そうして、プリン奪い合いしてたら、横からひょいとプリンが出てきた。 「やったあ!2個食べれる!」 はあ、とため息をつき、 「俺の客が持って来てくれたんだけど...別いいよ」 とあぐらをかいた足首を両手で握りしめた。 「嘘だよ、はい」 と、手付かずのプリンをマコに差し出されたが、要らない、とその場を去り、キッチン近くのソファに座った。 確かにシュンも心配ではあるんだけど...。 「なんだよ、根に持つタイプ?」 と、マコが着いてきてた。 真新しいプリンとスプーンを渡される。 「そうゆんじゃなくて」 「なに」 「これ、くれた人」 「プリン?」 「とか」 蓋を開けて食べた。 「もうひと月になるのにさ、会話だけで帰るんだ」 「ふーん、あれじゃない?勃たないとか?」 「まだ若いよ、20代」 「ふーん、なら、タイプじゃない」 「だったらなんで毎回、俺、指名」 「うーん...なんでだろ」 スプーンを咥えて天井を仰ぎ、マコが唸った。 「ありがとうございましたー」 受付してる、カズヤの声。 ふと、 (あ、昨日はリョウとしたし、今日はカズヤとしなきゃ) なんて思い出した。 「シュン!」 マコが呼び、シュンが寄ってきた。 「どうだった?大丈夫だった?」 シュンがニコッと笑った。 「最初、緊張したけど、余裕だった」 マコはシュンを見上げ、固まってしまった。 「あ、プリンいーな。1口ちょうだい」 マコからプリンを取り上げ、食べ始めた。 マコはシュンを見つめ固まったまま。 「?」 と俺はリビングに戻った。

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