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第5話

 そこがフランのいいところでもあるのだが、今回に限ってはそれも裏目に出るだろう。  現に今、仲間からは俺と会うことを反対されているはずなのに、サメから救ってやったというそれだけで、皆からの反対を押し切ってここまでやって来るのだ。  こんな状況の中で、もし、人間に出会ったなら……。  少しでも優しくされたなら……。  おそらくフランのことだ。  簡単に俺を信じてしまったように、人間にも心をひらいてしまうだろう。  もう少し、せめてあと3年はポセイドンの膝元にいるべきだ。 「やめておけ。とろくさいお前のことだ。きっとすぐに人間たちに見つかるだろうから」  フランを心配しての俺の言葉は、だが、フランにとってはただの反論にすぎない。  先ほどまであった輝く瞳は消え、眉は垂れ下がる。  そして、次第に眉尻が上がり、顔は少しずつ赤みを帯びる。 「なんで、どうしてそういう言い方をするの? クライドと同じ大人になったのに、僕を子供扱いしてっ! クライドなんて......っ!!」  肩を怒らせ、そこまで言うと、フランは俺に背を向け、美しい尻尾で小さな気泡を作りながら去っていった。 「『大嫌い』とは言わないのね、あの子」  フランという嵐が去り、再び沈黙が周囲を包む中、俺の背後から、甲高い女性の声が話しかけてきた。 「誰かを傷つけることができないんだ」 「それが、大好きなクライドなら尚のことってやつ?」  楽しげにそう言う彼女は、俺のすぐ隣までやって来た。

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