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第6話
体長は130センチ。
彼女は純白の美しい鱗を持つ、長細い、すらりとした魚だ。
彼女はここ――深海に住む魚で、稚魚の頃、フランと同じようにサメに殺されかけ、俺が救った。
それ以来、彼女は暇さえあれば俺のところにちょっかいをかけにやって来る。
「......あいつにとって、俺は物珍しいオモチャというところだろう」
「本当にそれだけかしら?」
「ああ、それだけだ」
好奇心旺盛なフランのことだ。
これ以上の理由が他にあるというのか?
――いや、その他の理由など考えられない。
なにせ、人魚一族には、伴侶を見つけるための特殊な能力が備わっている。
彼らが真実の愛に目覚めた時、世にも美しい純白の真珠が現れるのだという。
そうして人魚たちは、生涯を共にする伴侶を見つける。
俺がフランの傍にいても真珠が現れないのは、彼が俺のことを恋愛対象として見ていないからだ。
俺がフランを想うように、フランもまた俺を想ってくれているはずがない。
好奇心旺盛な彼だからこそ、俺が気になる。
ただそれだけのことだ。
勘違いしてはいけない。
厄介なのは、俺に芽生えたフランへの感情だ。
俺が彼に向けるもの。
それはまさしく『愛』だということ……。
早くフランの最愛の人魚が現れればいい。
そうすれば、俺のこの不毛な感情は落胆へと代わり、淡い期待も持たなくてすむ。
こればかりは、俺が持ち得る魔力でもどうにもできない。
――神よ、どうかフランをあきらめさせてくれ……。
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