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第7話
俺は最近、そればかりを願っている。
「......ふうん?」
彼女はまだ言い足りないのか、目の奥で光を宿している。
「それよりもいいの? あの子の性格だから、きっと人間の世界を見に行ったわよ? あんなに人間界のことを気にしているんだもの」
「……だろうな」
「貴方も苦労性ね、さっさとあの子に思いの丈を言っちゃえばいいのに」
「消されたいのか?」
「まあ、こわいわっ、消されないうちに退散しましょうっ!!」
俺が横目でひと睨みすると、彼女は言葉とは裏腹に、どこか楽しそうに闇の中へと消えていった。
まったく、俺としたことが。
深海で最も恐れられ、ポセイドンの次に強い魔力を持つという俺が、あんな人魚ひとりに振り回されるなんて……。
そう思うのに、それさえも楽しいと思えるのはフランのせいだ。
俺はコートを羽織り、急いで地上に向かった。
――……。
「フラン、どこにいる? 危ないから帰るぞ」
俺は大海原から顔を出し、おそらくはこの辺りにいるであろう人魚を探す。
外は夕日に照らされ、赤く染まっていた。
まるで血のように赤いその風景が不快な気持ちにさせてくる。
フランの身に何かあったのかと、不安にさせる。
俺は、はやる気持ちを抑え、目を細めて彼を捜す。
幸い、この辺りはあまり人通りが少なく、滅多に人間とは出くわさない。
だからすぐに人影を見つけることができた。
その光景を見た瞬間、俺の嫌な予感は的中したと知る。
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