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第9話

 すると、背後にあった海水が帯状になり、ふたりの人間をすっぽりと包み込んだ。  水に覆われた人間ふたりは口から大きな泡を吹き出し、ただ足をばたつかせてもがいている。  彼らは俺たちとは違い、水中では息ができない。  奴らはやがて力尽きるだろう。  ――いい気味だ。  フランを泣かせた罰だと知れ! 「やっ、ダメ!! クライド!! 殺したらポセイドンに怒られる!! クライドの立場がますます悪くなっちゃうっ!!」  フランはそう言うと、怒る俺に飛びかかり、意識を散漫にさせた。  おかげで俺が作り出した水は空気中に分散し、人間たちを解放させてしまった。 「くっそ、化け物めっ!!」  いくらか大きく咳をした人間は、怒りをあらわにした。  ナイフを持っていたひとりが俺に向かって突進してくる。  フランにしがみつかれている俺は、体勢を整えることができず、かろうじて急所は外せたものの、脇腹に刃が掠った。  鋭い痛みが走る。 「クライド!!」  フランは俺の異変に気づき、倒れ込みそうになった俺を押し、海の中へと潜っていく......。 「ひっく、ひっく......。ごめんなさい。ごめんなさい、クライド」  刺された脇腹がヒリつく。  傷口を押さえながら、目を開けると、そこには、大きな目から涙を流すフランの顔があった。  どうやら俺は無事、深海の奥深くに戻ってきたらしい。 「俺はどうってことない。お前は無事か?」  実際、刃は俺の脇腹をほんの少し掠った程度だ。  傷から流れる血もそこまでではない。
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