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第10話
2、3日もすれば、すぐにかさぶたになる。
だが、フランの心にできた傷はそんな単純なものではない。
今日、起きた出来事は彼の心を苦しめ続けるだろう。
自分のせいで俺が怪我をしたと思うその心は、目に見える脇腹の傷よりもずっと深い。
そのことを知っている俺は、空いているもう一方の手で、フランの頬に触れた。
「っつ!! クライド……クライド。ごめんなさい。ごめんなさい。貴方を傷つけるつもりはなかったのに……」
案の定、フランは自責の念を抱いていた。
「フラン、自分を責めずともいい。俺を助けるためにしたことだ」
あの時、フランのことで頭に血が上っていた。
奴らの息の根を止めたその後、俺の身がどうなるのかということを考えてさえいなかった。
フランがいてくれたからこそ、人間を殺さずにすんだ。
こうして、罰せられることなく生きていられる。
感謝こそすれ、フランを責めるなど誰ができるだろうか。
そういう気持ちを込めて、フランの目尻に溜まる涙を親指で拭ってやる。
すると、フランはふたたび口をひらいた。
「僕、僕は......貴方のことが......好き......なのに......。
サメから助けてくれたクライドに一目惚れして......クライドに近づきたくて、やっと同じ大人になれたのに、それでも子供扱いされて......。
イラってしたら、後先考えずに人間の世界に行って、捕まって......。
その結果、大切なクライドを傷つけてしまった......ごめんなさい。ごめんなさいっ!」
しゃくりを上げながら、必死に謝るフラン。
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