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第10話
*
とりあえずは氷のように冷たくなっていた潤太に、預かっていた彼のコートを着せてマフラーを首に巻きつけてやる。そして丸見えの膝には自分のコートを脱いでかけてやった。
(十二月の寒い夜に、俺はなんでこんなところで男子高生 といい雰囲気になっているんだ……)
「そういえば、最近、第一校舎の角んところにある公園に、変質者がでるって噂になってたな」
大智は胸に縋りついて、うぇんうぇん泣いている潤太の背中を撫でてやりながら、ふと思いだしたことを口にした。
「うぅうっ。なんでもっと早く教えてくれないのぉ。先輩のいじわるぅ、うぅうっ」
「意地悪って……」
(ひどいやつだな、こいつ)
やさしくしてやってれば、図 に乗りやがって。そもそも潤太がその公園に出かけるだなんて、自分はひとことも聞いていない。
第一校舎の角の教室は、どの学年でもG組の教室にあたる。その教室の真下が変質者がでるといって噂になっている公園だ。その変質者は自分のナニを見せるのが好きだそうで、日中公園からG組の教室に向かってナニを曝しているらしい。
第一校舎は角の教室にだけ特別にベランダがついているので、放課になるとよそのクラスの生徒までもが、その変質者を見物するためにG組のベランダに集まっているという。生徒たちのいい暇つぶしになっていた。
「いや、けっこう有名な話みたいだぞ? 一年でもG組のやつらが云ってなかったか?」
「そんなの知らないよぉ……、うぅぅ、ひっく、ぐずっ……」
そんな危険なところへ、夜にミニ丈にしたスカート姿で行くだなんて、こいつは馬鹿としか云いようがない。
はあぁっ。
大智は大きな溜息をついた。
「お前、ほんっと鈍くさいし、早とちりだし、危なっかしいよな。仕方ないから、お前のその――、斯波への告白ごっこ? 俺もつきあってやるよ」
「えっ、ホント……?」
その言葉に、ぴょこんと潤太が顔をあげる、彼の長いまつ毛のさきに涙の雫がついていて、それを舐めたいと思ってしまった大智は焦った。
「あ、あ、あぁ。――お前は部活の後輩だからな!」
「やったー‼ 大智先輩、だから好きっ!」
「うわっ」
よろこんだ潤太が胸のなかからさらに飛びついてくると、大智はその勢いで彼を抱えたままひっくり返る。
ガンッ‼
硬いタイルに強かに頭をぶつけた拍子に、大智の目から星が飛んだ。
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