17 / 21

(17) 椿 3 紡がれる願い

拓海は目が覚めると、裸でベッドに寝かされていた。 そして、両手、両足首はロープで縛られ、ベッドの四隅に固定されている。 ギギッ……。 引き剥がそうとするもロープが食い込み身動きが取れない。 拓海は、辺りを見回した。 どこかのホテルのような部屋。 ふと人の気配を感じた。 拓海は、叫んだ。 「誰だ!?」 そこに一人の人物が立っていた。 「お寝覚めですか? 拓海様。いや、拓海」 「椿……」 椿は拓海に近づき、拓海の頬を優しく撫でながら言った。 「まさか、お前がネズミだったとは……」 「……眠り薬か? 酒に混ぜたのか?」 椿は無言で頷く。 そして、言った。 「『農場』の一つが何者かによって潰された。そして、『集荷場』の運び屋にも行方不明者が出ている。我々を探っている者がいるのは分かっていた。だから、いずれここにも現れるだろうと罠を張っていたが、まさか、お前だったとはな……」 拓海は観念したのか、否定する事なく目を閉じた。 「拓海、その名前も本当かどうか定かじゃないが……吐いてもらおうか? お前は何者だ?」 「俺は俺だ。それ以上でもそれ以下でもない」 「……そうか……簡単には吐かないか。なら仕方ない。拷問をするまでだ」 椿はドレスの肩ひもをずらした。 ドレスは、すっと足元に落ちる。 するとそこには、美しい男の肢体が現れた。 細身の体に、透明感のある白い肌。 それを引き立たせるシンプルなレースの上下の下着。 椿は、黒髪を片耳にかけながら妖艶に微笑んだ。 「私の拷問はつらいぞ……天国と地獄を同時に味わうことになる。どこまで我慢できるかな?」 椿は、唇を舌なめずりした。 **** 椿は、拓海のペニスをしゅっ、しゅっ、としごきながら、先端に舌を伸ばしレロレロと舐めた。 もう一方の手は、子種の袋を容赦なく揉みしだく。 やがて、隆々とした立派な肉棒が椿の目の前にそそり立った。 (す、すごいな……な、なんて、大きいんだ……この男のは……) 椿は、想像以上の大きさに目を見張った。 「はぁ、はぁ、くっ……」 悔しそうな顔をする拓海。 そんな拓海の顔を見て、椿は含み笑いをした。 「ふふふ。こんなにカチカチに勃起しているぞ、拓海。お前、私のような咎人に嬲られて興奮しているのか……変態め、ふふふ」 椿は尚も、ちゅぱ、ちゅぱ、しゃぶりながら言った。 「なぁ、拓海。私の見立てでは、お前は貴族出身の軍人……いずれにしても、ただの貴族ではないのだろう?」 「はぁ、はぁ……何度言えば分かるんだ……俺は一般市民だ……」 拓海は、息を荒げながら答えた。 裏筋に舌を這わしていた椿だったが、その拓海の言葉に怪訝な顔をした。 「一般市民……警察だと言いたいのか? ふっ、私を馬鹿にするのもいい加減にしろ……風格、身のこなし、そして教養。警察にこんな男がいるとは思えない……とするとプロの諜報員……どこかの組織に雇われている、といったところか……」 椿は、はむっ、と口に咥えた。 そして、亀頭を唇で絞りとるように締め付ける。 拓海は堪らずに、うっ、うう、と声を上げた。 「さぁ、どこの組織か吐いてもらおうか……」 椿のフェラ攻めは続く。 再び、拓海のペニスを口の中にすっぽり収めると、頭を上下移動させ舌を絡めながらしごいた。 拓海の男根は、むきっ、むきっ、と男らしくいきり立っていく。 そのぶっといペニスは、逆に椿の小さい口を犯していくようだった。 椿は、悶え苦しみながらも、想像を超える一物に感動を覚えていた。 (すごい圧迫感……たまらない……ああ、ビクビク脈打ってなんて逞しいんだ……あっ、うう、アナルがヒクヒクしてくる) **** 椿は、ぷはぁ、と口を離した。 だらっと涎が糸を引き、滴り落ちた。 椿は、おもむろに、自分の頭の後ろから真っ赤な髪留めリボンをしゅるっと外した。 黒い艶やかな後ろ髪が、ハラっと広がる。    「さぁ、これは私からのプレゼントだ……ふふふ、こうやってペニスの根元にきつく巻くとな、射精できなくなる。苦しいぞ、ふふふ」 リボンで飾られた拓海の勃起ペニス。 時折、ピクン、ピクン、と動くがリボンで締め付けられ赤く腫れた。 椿はそれを満足気に見つめた後、拓海の顔に顔を近づけた。 そして、うっとりとした目をしながら、拓海の口に、はぷっとキスをした。 椿のツンっと尖った唇がプルンと震える。 拓海は、息を切らせながら言った。 「はぁ、はぁ……や、やめろ……俺に雇い主などいない……だから、放せ……」 「なぁ、拓海。お前は強情な男だな……ふふふ、私は嫌いじゃないぞ……さあ、お望みどおりお前の大事な物を頂くとしよう……」 椿は、拓海の体を跨いで座った。 そして、拓海のペニスを握りしめ、そこに自分のアナルを沈めていく。 お尻の穴がぐぐぐっと広がり、徐々に挿っていく。 「うぅ……椿、やめてくれ……」 拓海の悲鳴とも言える声を上げた。 椿は、構わずに腰を最後まで落としていく。 (うぐっ……はあああっ……す、すごいっ、奥まで挿ってくる……想像以上の巨根。ああぁ、こんなに感じるのいつ以来だ……) 挿れただけで、体の芯に電気が走る。 (あはっ……最高だ……拓海。お前とセックスできるなんて私は何て幸せなんだ……お前がネズミで本当によかった……) 椿は、悦びで顔を赤らめ腰を振り始めた。 **** これは『恋』ではない。 単なる拷問なのだ。 椿は、そう思うと、一気に性衝動が解放された。 心の赴くままに、拓海の体を貪っていい。 椿はその喜びで震えていた。 騎上位の体勢で拓海の上に乗っかった椿は、腰を振りながらも、拓海の体を夢中で愛撫する。 舌を這わして、耳から頬、唇。 そこから、首を伝わり胸板、乳首へ。 時折、はぷっと甘噛みをして、満足そうに微笑む。 まるで、自分の匂いを擦りつけているかのように……。 そして、椿の腰の動きはだんだん激しくなっていく。 ずちゅ、ずちゅ……ずちゅ……。 リボンの締め付けで真っ赤になったペニスが、アナルを広げながら激しく出入りを繰り返す。 いやらしい男同士の接合部。 拓海という男の体にすっかり魅了された椿は、既に興奮が高まりメスイキ寸前まで来ていた。 椿は、拓海にガバッと覆いかぶさり、手を後ろに回して拓海のペニスを握り締める。 「ほら、ほら、出したいだろ? ここに溜まった子種を私の中へドバっと……ふふふ、いいぞ、いいんだぞ? お前が洗いざらい吐けば……思う存分、たっぷりとお前の白い液を私の雄膣に出して……ほら、ほら」 そのまま椿は玉袋を揉み上げていく。 拓海は、はぁ、はぁ、と辛そうな顔で目を潤ませた。 その目を見た椿は、もう止まらなかった。 (あっ、あっ……い、いきそう……いくっ……) 絶頂……。 椿は、イキの痙攣を繰り返し、拓海の胸に崩れ落ちた。 (はぁ、はぁ、なんて素晴らしいんだ……この男のとセックスは……ああ、まだ、まだ、この男と交わっていたい……) 椿は、まだ苦しそうに息を荒げる拓海の唇を奪いにかかった。 **** 椿が、再び拓海のモノをアナルに咥え込もうとした時、それは突然おこった。 バチッという音とともに、拓海のペニスを縛っていた赤いリボンが外れたのだ。 それと、時を同じくして、あれだけ口を閉ざしていた拓海が口を開いた。 その言葉は、椿を唖然とさせた。 「お前は、この『双頭の蛇』で、可哀そうな子達を救済しようとしているのではないか?」 椿は固まった。 「な、なぜ、それを……」 拓海は、椿の疑問に答えるかのように続けた。 「それは、お前の子供達に向けられた眼差しが、あまりにも優しいからだ」 その拓海の言葉に、椿は手をわなわなと震わせた。 「黙れ! もういい! それ以上、言うな!」 そうわめき散らかした。 しかし、拓海は続ける。 「お前は、人身売買という罪を背負ってでも、彼等を救いたいと願っている。それは、自分自身の幸せを捨ててでも。違うか?」 拓海は真っすぐ椿を見つめる。 その漆黒の瞳は、すべてを見透かしてくる。 椿は、拓海の頬をパチンパチンと叩いて、その言葉を止めた。   「お、お前! 黙れと言っただろ! 私のことはいいんだ! お前は自身の事を吐けばいいんだ!」 椿はすっかり感情的になっていた。 自分をコントロールできず、怒鳴り散らかした。 そしてなぜか、涙が滲み出ていた。 どうして涙が出てくるのか、椿にも分からない。 拓海は、椿に囁いた。 「そうか、それで分かったよ。なぜ、椿、お前が美しいのか……」 「う、美しいだと! や、やめろ! 私を惑わす言葉を吐くな!」 椿は拓海の両肩を掴み、ベッドに抑え込もうと力を込める。 拓海は構わずに続けた。 「……自分を犠牲にしてでも誰かを救いたいと願う気持ち。それこそ本物の美しさ……だがら、お前は美しいんだ」 「や、やめろ! 聞きたくない。お前の言葉など……」 拓海の甘い言葉。 それは、椿の心のスッと染み込んでくる。 心地よく温かい。 椿は、必死にそれを否定しようとするのだが、今の椿では防ぎようがない。 拓海は、優しく微笑んだ。 「椿、もっとよく顔を見せてくれ。そして、ダンスしたときの微笑みを見せてくれないか? 俺は、お前の笑顔を見ると幸せな気持ちになれるんだ」 「ぐっ……」 椿は、涙が滴り落ちるのを我慢して、唇を噛んだ。 (……拓海。私だって、お前とダンスした時はどんなに幸せだったか知れない……すべてを忘れるくらい) 椿の中で複雑な感情が入り交じる。 それは、怒り、悔しさ、嬉しさ、何が何だかよく分からない。 ただ、拓海を好き、という気持ちには抗えなくなっていた。 (ああ……拓海……私はお前をまた好きになってしまう……せっかく、忘れられそうだったのに……) 拓海は、椿の目を真っ直ぐ見て言った。 「椿が男の子達を救うのなら、俺が椿を救いたい。だめか?」 ……トクン。 心の奥底に感じる胸の高鳴り。 そう、これは恋のときめき。 (……だ、だめだ、恋など……私には絶対に……私には『双頭の蛇』が……弟達の無念が……) 拓海は言った。 「キスしてくれないか? 椿」 気がつくと、椿は拓海の唇に唇を合わせていた。 椿の頬に涙が流れ落ちる。 椿には、その涙の理由は分かっていた。 愛に飢えていた。 それをずっと包み隠していた自分。 弟達のせいにして。可哀そうな男の子達のせいにして。双頭の蛇のせいにして。 誰かに、愛されたかった。 そんな風に本当の気持ちを誤魔化していた。 椿は知ってしまったのだ。 自分が恋をした男は、そのすべてをお見通しだったという事を。 だから、この涙は嬉し涙……。 **** 「椿……締まる……とても気持ちいいよ……」 対面座位で椿のアナルに挿入された拓海のペニスは、椿の下腹部に今までにない圧迫感を与えた。 お尻の穴がメリメリと広がっていく感覚。 「うっ……ううう、おっきい……拓海……切ないよ」 拓海のピストンが始まる。 椿は、うっ、うっ、と唸り声を上げ、両手を後ろについた。 拓海の腰の突き上げが体の奥まで突き刺さってくる。 (ああ、感じる……拓海を体の中で感じる……熱くて、切なくて、愛おしい……) 拓海のペニスは、椿の感部を攻め続ける。 それは片時も休むことなく続けられた。 拓海の情熱的で激しい腰の動き。 滴る汗。 濡れる前髪。 椿は、細っそりした腕を拓海の首に巻きつけて、もっと、もっと、とおねだりをする。 「はぁ、はぁ、椿……椿……」 「拓海………いくっ、いくーっ……」 椿の艶やかな黒髪は、ふあっと後ろへ流れた。 椿は、すでに幾度となく小さな絶頂を繰り返していた。 体はビクビクッと痙攣し、その度に拓海の体にしがみつく。 半開きの口からは、はぁあ、はぁあ、と熱い吐息を漏れ、透き通るような白い肌は、汗でキラキラと輝いた。 椿は、そうやって何度も、何度もイキを繰り返した。 するとどうだろう。 体が少しづつ軽くなっていくのだ。 見知らぬ男達に犯され続けた汚れた体。 人身売買に手を染めた罪の意識。 おそらく、そんな黒くモヤモヤした物が徐々に薄らいでいく。 ずっと繰り返される快楽の中で、椿はこれまでにないほどの幸せを感じていた。 それは、椿が初めて知る『愛』に他ならない。 そして、迫りくる新たな波。 それは、今までに味わったことが無いような大きな渦 椿は、拓海の背中に爪を立てた。 「……た、拓海、もう、だめ……わ、私は……おかしくなりそう……」 「おかしくなっていい。椿、お前は生まれ変わるんだ。俺の胸の中で……いいな」 椿は、喘ぎ声を出しながら、何度もうなづいた。 そして、拓海にギュッと抱き着き絶頂を迎えた。 「いっ、いくーっ……」 **** 椿は、真っ白な空間を彷徨っていた。 「ここはどこだ?」 ふと、懐かしい匂いがした。 『椿お兄ちゃん!』 椿は、声のする方に振り向いた。 するとそこには、弟達の懐かしい顔があった。 椿は、驚いて言った。 「……どうしてお前達がここに……」 『ふふふ。椿お兄ちゃんの事、心配で見に来ちゃった!』 『ねー!』 弟達は、椿との再会が嬉しくて仕方ないようだ。 ニコニコと楽しそうに笑う。 弟の一人が言った。 『椿お兄ちゃん、好きな男の人に抱いてもらえたんだね!』 椿は動揺して答えた。 「み、みんな、ごめん。違うんだ! これは!」 しかし、弟達は首を振る。 『うううん。椿お兄ちゃん! 違う事なんかないよ。椿お兄ちゃんはもう十分頑張ったんだから、これでいいんだよ』 『そうだよ!』 「しかし、私だけ、幸せになるなんて……」 『椿お兄ちゃん! 僕達の分まで幸せになって!』 『うんうん!』 弟達の言葉に、椿は嬉しくなって涙が出てきた。 椿は、涙を堪えながら言った。 「うっ、うううう……こんなお兄ちゃんだけど、みんな、許してくれるかい?」 『もちろんだよ!』 「ありがとう……みんな。分かった、お兄ちゃん、幸せになるな」 『おめでとう! 椿お兄ちゃん!』 『おめでとう!』 弟達は、飛び跳ねながら、わーい、わーい、と叫んだ。 そんな弟達の姿を、椿は目元を指で抑えながら見ていた。 そこへ、弟の一人が話かけてきた。 『ねぇ、椿お兄ちゃん、お願いがあるんだ』 「ん? なんだ」 『もう、僕達の為に頑張らないでね!』 「え?」 椿は、驚いて声を上げた。 弟は続ける。 『僕達はもう報われたんだ……椿お兄ちゃんが幸せになるって言ってくれたから。それが僕達の夢。だから、もう叶ったんだ!』 『ね!』 「な……」 弟達の優しい思いが椿の胸に突き刺さる。 目頭が一気に熱くなった。 「うっううう……お前達……」 涙がぼろぼろと溢れでた。 もう我慢出来ない。 頬を伝わり滴り落ちる。 弟達は、そんな椿に笑顔で言った。 『じゃ、もう行くね、僕達。またね、椿お兄ちゃん! じゃあね!』 『ばいばい!』 「……ま、またな……お前達」 椿は、消えゆく弟達の背中を涙で曇った目で見つめた。 (お前達、お兄ちゃんは今とっても幸せだよ……) **** 椿は、ベッドに横になり宙を見つめていた。 拓海は、椿の肩にポンっと軽く手を置いた。 「じゃあ、いくよ。椿……」 椿は、はっとして拓海を引き留める。 「ま、待てくれ……拓海」 「なんだ?」 「……なぁ、拓海、私は間違っていたのかな?」 椿の問いかけに、拓海は真っすぐ椿の目を見て答えた。 「お前に救われた子供達は沢山いるのだろう。彼らにとってお前は救いの神だったのだ。それを誰が間違いだと言えるか?」 「ふっ、優しいな……お前は」 椿は、拓海の事を眩しそうに見つめた。 そして、思っていた事を口にした。 「もし、私が日の当たる場所に立てるようになったら、また私と会ってくれるか? 今度は自分の為に生きてみようと思うんだ。だから、その時は……」 拓海は、椿の前髪を払い額にチュっとキスをした。 「ああ、もちろん。待ってるよ……そして、思う存分抱いてやろう」 「ありがとう、拓海……うっ、ううう……」 椿は、嬉しさのあまり泣き崩れた。 (また、いちからのやり直し。でも、大丈夫。拓海がいるのだから……弟達よ、お兄ちゃんは頑張ってみるよ) (椿お兄ちゃん、頑張って!) (頑張ってね! 応援しているからね!) 涙で潤む椿の目には、弟達の笑顔がありありと見えていた。

ともだちにシェアしよう!