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すれ違う笑いのツボよりも愛は深く――10
「話を聞いてくれ和臣。まずは、橋本さんが気絶した件について」
焦って説明しようとした俺を、無言のままジト目で見つめてくる。
口元をきゅっと引き結び、下手な言いわけで誤魔化そうとしても無駄なんだからねという感じが、眼差しから駄々漏れしていた。
「さっき橋本さんが付き合った相手は、ドライバーって言っただろ。その人が運転する車で、どうやら気絶したみたいなんだ」
「気絶しちゃうくらいの運転って、どんなものなのかが想像つかないんだけど」
「だよな! 橋本さんにすごいドラテクなんだと熱く語られたんだけど、さっぱりだった」
「ねぇ恭ちゃん、その人が運転する車に乗ってみたくない?」
さっきまでの不機嫌は、どこへいったのか――キラキラと目を輝かせて俺に顔を突き合わせた、和臣の満面の笑みが眩しすぎる。
「橋本さんが気絶する運転に、わざわざ乗り込みたいなんて……」
遊園地にある絶叫系マシンにギリギリ1回乗れるか乗れないかの俺とは違い、何度もスリルを味わえてしまう和臣なら、多分平気なのかもしれないが。
「頼んでみてくれないかな。そしたら橋本さんの恋人がどんな人なのか知ることができちゃうし、その人のドラテクも間近で見られるんだよ!」
橋本さんの恋人への興味+ドラテクが相まって、和臣のテンションが一気にうなぎ登りになったことが、俺としてはちょっと面白くない。だって橋本さんの恋人は同性なんだ。同じ男に興味を抱くなんて、ちょっといただけないんじゃないだろうか。
「そんなに気になるのか?」
不機嫌満載な顔で告げた俺の言葉を聞いた和臣は、一瞬だけきょとんとしたけど、すぐさま意味ありげな笑みを唇に湛える。
「気になるに決まってるでしょ。だってあの橋本さんの恋人だよ? 男だけど可愛いお尻をしているのかもしれないし、どんな人なのかやっぱり気になるでしょ!」
「確かに。気になるっちゃ気になる……」
「それ以上に気になることがあるって言ったら、聞いてくれる?」
言うなりリモコンを手に取り、テレビを切ってしまった和臣。
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