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和臣による恭介への聖指導!?2
「あ、いや。そうじゃなくて……。参ったな」
「何なんだよ、もう! はっきりしないんだから」
「和臣のことを大切に思っているからこそ、一ミリも傷つけたくないんだ……」
恭ちゃんから告げられたセリフで、僕の中にある怒りが一瞬にして消え去った。
「絶対に傷つけたくないって思っていても、そういうことをするのが初めてだからさ。それに和臣のことが好きすぎて、痛いとか嫌なことが分かっていながらも暴走して止められないかもしれない」
「恭ちゃん……」
「おまえが好きだから、抱きたい気持ちはあるのは確かだ。でも安易に手を出してしまったら、タガが外れてコントロールできない自分の精神状態が不安でしょうがなくて……。それに和臣は俺よりも躰が小さいし、力任せにやったら、壊れてしまうんじゃないかと思って怖いんだよ」
僕のことを大事に想ってくれる恭ちゃんが、すごく愛おしくて堪らない。壊れてしまうんじゃないかってくらいに強く抱きたいという気持ちが伝わってきて、躰がじわりと熱くなる。
それに比べて僕はバカだ。恭ちゃんとHしたい理由が浅はかすぎて、口に出すのが躊躇われる。だけど言わなきゃいけないよね。恥ずかしそうにもじもじしながらも、恭ちゃんはきちんと自分の気持ちを伝えてくれたのだから。
「あのね恭ちゃん、僕は恭ちゃんとひとつになりたかった本当の理由は、誰にも捕られないようにするためだったんだ」
思いきって告白した僕の言葉に鳶色の瞳を大きく見開き、首をかしげる。恭ちゃんの柔らかい前髪がさらさらと流れて、瞼の上にくっきりとした陰影を作った。
ただでさえ格好いいというのに、ちょっとした仕草や髪の毛の動きひとつで更に格好よさが増してしまう恋人に、不安にならないヤツはいないと思う。
優しくて格好いい恭ちゃんを、自分だけのものにしたい――
「僕、どん臭いし優柔不断だし見た目もパッとしないから、恭ちゃんが呆れていつか捨ててしまうんじゃないかって、考えずにはいられなくてね」
「性格は仕方ないかもしれないけど、見た目がパッとしないなんてことはないぞ」
「そうなの?」
上目遣いで恭ちゃんを見つめたら、僕の呼吸を止める強さで抱きつき、頭にすりすりと頬ずりをした。
「和臣はバッチリ俺の好みだから。ちょっとだけ癖のある髪も……」
言いながら、すりすりしていた部分にキスをした。
「俺を見る二重瞼の瞳も、ぷにっとした柔らかい頬も――」
指摘したところに次々と唇が触れていく。触れられると当然息が肌にかかるから、くすぐったくて変な声が出そうになった。
「一生懸命に話を聞いてくれる、形のいいこの耳も」
恭ちゃんの艶っぽい声が耳に届いた瞬間、耳朶を緩く食まれた。
「ンンっ!」
やわやわと唇に食まれながら熱い吐息をふーっとかけられるせいで、一気に体温が上がってしまう。それだけじゃない……。恭ちゃんの声と唇だけなのにすごく感じてしまって、下半身が大きくなっちゃった。
「時折可愛らしく傾げる、細長い首も大好き」
そこもキスされるんだと身構えた僕を予想を裏切って、首の横を舌先で下から上にすーっと肌を舐められた。
「ひぃっ、恭ちゃ、んっ、くすぐったぃ!」
僕の訴えも何のその、今度は喉仏をはむっと食べながら、べろべろする。
「ちょっ、駄目ぇっ……も、無理」
膝が震えてきたので恭ちゃんの躰にもたれかかって、乱れた呼吸を何とか整えようとしてみた。絶対酸素が足りてないと思われる。頭がどんどんぼーっとしているし……。
「和臣、駄目って言ったけど、何が駄目なんだ?」
「え?」
「だって和臣のココ、触れていないのに形が変わってるじゃないか」
恭ちゃんの手が、ジーパンの上からするりと触れてきた。ただ触れただけなのに、僕の中での衝撃は半端なくて今にも達しそうになる。
「そっそれ以上触らないで! イっちゃうから!」
「は?」
叫んで懇願した僕の声に、恭ちゃんは唖然とした顔になった。
「僕の……僕のココは、恭ちゃんが触ったと妄想しただけで3秒でイケちゃう、情けないモノなんだ。だから触らないでほしい……」
あまりの恥ずかしさに、俯きながら告げた言葉だった。
きっと恭ちゃんは、あまりの早さに呆れ果てちゃうよね。これから先、いい雰囲気になっても一緒にイケない、こんな僕が恋人でごめんなさいって謝った方がいいのかな?
俯いていた顔にあたたかい両手が添えられ、強引に上向かせられた。僕の視界に映った恭ちゃんの顔がとても優しいものに見えたのは、気のせいなんかじゃない。
「俺の手で触ったのを想像しただけですぐにイケるなんて、嬉しいことじゃないか」
「でも……」
「たくさんイカせてあげたい。なぁいいだろ?」
いつもの二択をせずに告げられた言葉は、とても甘やかなものだった。強請られたそれに抗えるわけもなく、頷きながら踵をあげて恭ちゃんの唇を塞いだ。
「和臣、好き……だ」
キスの合間に囁かれる告白は、僕の心を穏やかにする。恭ちゃんが誰かにとられるんじゃないかという不安な気持ちとか、自分の駄目さ加減に呆れてポイされちゃうんじゃないかなんてありえないことなど、すべてがくだらないものに変換されていった。
「恭ちゃんっ……僕も、僕も好きだよ。すっごく大好き」
「本当に好き?」
軽くちゅっとしてから改めて質問する恭ちゃんに向かって、満面の笑みで答えてあげる。
「好きに決まってるでしょ。どんな人が現れても、僕の心を動かすことなんてできないんだ。恭ちゃんでいっぱいになってるからね」
「そんな和臣をこれから抱いていい? ダメ?」
「始める前に、シャワーを浴びたいな」
綺麗な躰を抱いて欲しかったのでそう言ってみたのに、酷く残念そうな表情を浮かべる。
「……分かった。お先にどうぞ」
「恭ちゃん、待ってる間が暇でしょ? これでも見ながら、躰を温めておいて」
自身のスマホをポケットから取り出し、サクサクと操作してから恭ちゃんの手に渡した。
「最近、それにハマっちゃってさー。受けの男のコがちょっとだけ恭ちゃんに似てるせいで、ドキドキしながら見ちゃうんだよね」
含み笑いをして浴室に向かった僕を、微妙な眼差しで恭ちゃんは見送ったのだった。
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