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和臣による恭介への聖指導!?3

***  押しつけるように手渡された和臣のスマホに映し出されている動画を見て、思いっきり顔を引きつらせてしまった。 (臣たん、何を考えているんだ。あからさまに卑猥な動画を俺に見せて、躰を温めておけなんて……)  眉をひそめながら映し出されるゲイビを、手元から少し離して眺めた。  こんな動画よりも、和臣の裸が早くみたいのに――そんな文句を言いつつも見てしまうのは、男のサガと言いわけをしておこう。 『こういうの実際はじめてなんですけど、男に感じさせられるなんて、マジでありえないと思うんですよねー。ケンジ、21歳、頑張って体験しまーす!』  白シャツにジーパン姿の男がおもむろに登場して、意味なくキョロキョロしたあとに自己紹介を始めた。  コイツが和臣が言ってた、俺に似ているというヤツだろうか? 目元が似ていると指摘されたら、若干似ているような気がする。あとは全然まったく、微塵も似ていないと断定するけどな!  つぅか、こんなものを見て、和臣が興奮しているなんて信じられない。他の男のヤってるのを見て、何が楽しいんだか……。 (……俺に似た男優のヤられているところを見て興奮するということは、やっぱり俺の中に挿れたいということの表れなんだろうか?)  最初に挿れてほしいんだと強請られたけど、その逆もやってみてもいいと言ってたもんな。これは交互にやってみた方がいいのかな? 『やぁん! くすぐったい』 「うわっ!?」  考えにふけっていたらスマホから変な声が突然聞こえてきて、驚きついでに落としそうになった。  画面の中では自己紹介したケンジという男が、キツネ顔のちょっとだけ体格のいい男に、乳首をべろべろ舐められているシーンが映し出されていた。 『やめっ、くすぐったくて、腹がよじれそうだってば!』 『はじめてのクセに感度がいいじゃねぇか。こんなにビンビンに勃たせてよ』 『アンタがしつこくやるからだろ。全然感じてないし』 『感じてないって言ってるそばから、どうしてここがこんなになってんだ?』  いやらしい笑みを浮かべた男が、組み敷いているケンジの下半身に手を伸ばしてジーパンの上からそこを握りしめた。 『あひっ!』  顔を歪ませて首を横に振りながらイヤイヤを示していても、感じていることは傍から見ている俺ですら、分かりすぎるくらいに分かった。 (画面の中のふたりのテンションが上がればあがるほど、面白いくらいに自分の中のテンションが下がっていく……)  顔を引きつらせながら、遠くからコトの成り行きを見守った。 『はぁん! もうイク!!』  体格のいい男に挿入された途端にケンジが暴発したらしく、自分の躰に白濁をまき散らした。  男とヤルのが初めてだと言ったくせに、挿れた瞬間にイクなんてありえないだろ。こんなやらせ動画を和臣が見て喜んでいるなんて、本当に信じられない。 「……ちょっと待て」  落ち着け俺、よく考えてみろ。  和臣はこのホモビを見て、躰を温めておけと言った。アイツのことだ、相当数のホモビを見ているだろう。そういういかがわしいものばかりを見ているせいで目が肥え、俺がしようとすることをいちいちチェックし、『違うんだよなぁ、恭ちゃん』なぁんて心の中で感想を述べるかもしれない。  下手なことをしたら、臣たんに嫌われてしまう!!  そう考えたら手元で卑猥な声をあげ続けるホモビから、何かしら学ばなければならない――目を逸らしている場合じゃないだろ。  仕方なく画面に視線を落としたとき、それがパッと奪われてしまった。 「お先にどうも。恭ちゃん、躰は温まった?」  腰にバスタオルを巻いた和臣が、ひょいと恭介の顔を覗き込んだ。  ヤバいものを見ている最中だったからこそ、ガン見していたのを知られないようにすべく、顎を引いてやり過ごしてみたものの、目の前にある半裸の和臣の迫力は、かなりのものだった。 「恭ちゃん?」  幼馴染としてずっと過ごしてきたから、和臣の裸なんて見慣れているはずなのに、今はそれが違って見えた。腰に巻いているバスタオルを外したら、全裸になることを頭の中で想像して、頬が自動的に熱くなる。 「何だか恭ちゃん、顔が真っ赤だけど大丈夫?」 「そういう和臣こそ、どうしてそんなに余裕があるんだよ……」  心情を悟られないように、怒った口調で発言した恭介を、和臣は柔らかくほほ笑みながらしゃがみ込み、真っ赤になってる頬に触れた。 「僕ってば、余裕があるように見える?」 「見える……。まるで経験者みたいな感じ」  まぶたを伏せて告げられた言葉に、和臣は触れていた恭介の頬をつねりあげた。 「いたぃ!」 「恭ちゃんのバカ。僕が経験者なわけがないでしょ。これでも緊張してるんだよ。シャワーを浴びながら考えたんだ。このあとに恭ちゃんがあちこちを見たり、触れたりするんだなって。こうやって」  頬をつねっていた手で恭介の右手を掴み、自分の胸元に導いた。 「幼馴染みの恭ちゃんじゃなく、恋人として触れられるってことに、ドキドキしないヤツはいないと思うけどな。伝わってる?」  恭介の手のひらに感じる和臣のドキドキは、自分のものよりも高鳴っているように響いてきた。ついでじゃないけど触れてみたいと思った、綺麗な色をしている乳首をきゅっと摘まんでみる。 「ちょっ!? 難しい顔しながら、いきなり何で始まっちゃうの? 摘まんでる指先の力が強すぎるんだけど」 「そうか。感じさせようと思ったんだけど、強すぎちゃいけないんだな、なるほど……」 「真っ赤な顔のまま、何をぶつぶつ呟いているのやら」  (どうして触れてる俺が、こんなに照れなきゃならないんだよ。臣たんってばホモビの見過ぎで、羞恥心が欠如しちゃったんじゃないのか!?) 「と、とりあえずベッドに移動しよう」  すくっと立ち上がった恭介を見て、和臣も立ち上がった。 「恭ちゃんはシャワーを浴びないの?」 「あ、確かに。忘れてた」 「悪いけど浴びさせないよ。僕をこんなにして放っておくの?」  言うなり恭介の左手首を掴んで、大きく育った和臣の下半身にあてがう。 「ゲッ! なんでだよ」 「なんでって、好きな人に触れられて勃たない男はいないでしょ」  ほらほらなんて言いながら、恭介の手のひらにすりりと擦りつけた和臣。積極的に押し付けているのにもかかわらず、恭介の手のひらは思いっきりパーの状態でいることが精一杯で、指先のひとつも動かせなかった。 「おまっ、何でこんなにでかっ……」  自分のよりも大きな和臣のモノを押しつけられたせいで、それが声になって出てしまった。 「ふふっ、恭ちゃんを想う気持ちと比例した大きさだよ」 「えっ!? あ、うん」  和臣の盛大な告白を聞いて、恭介の顔がますます赤くなった。

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