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愛する想いを聖夜に込めて――
(くそ~っ! 結婚してはじめて迎えるいい夫婦の日を仲良く過ごそうとしたのに、接待をねじ込まれるなんて。臣たんとの初めてという、とても貴重な日だったのに! 来年だと、はじめてじゃなくなるんだぞ )
榊の勤めるマイスター・フェニックス証券の上司荒木田は、無理難題な仕事を何かにつけて押しつける男だった。荒木田が懇意にしている女性客に媚を売るための道具として、その日に無理やり接待に付き合わされてしまったのである。
計画的にきちんと前倒しで仕事をこなし、11月22日に備えていただけに、落胆を隠せなかった。それゆえに愛想の悪い榊を、大切にしている客の前で叱れなかった荒木田が、残業という形で罰を与えた。
仏頂面のままパソコンに向かい合い、面倒な仕事を黙々とこなしていく。しかしイライラがつのりすぎて、どうしても集中力が続かない。
スマホでカレンダーを表示して、今後のスケジュールを確認する。12月のクリスマスイブの日に、大きなハートマークが付けられていた。それを目にしただけで、榊のモチベーションが自然と上がっていく。
(この日は、絶対に残業なんてするもんか。臣たんと結婚して、はじめて過ごすクリスマスなんだから!)
予約するのに1年待ちというレストランで食事ができるご褒美を、つい最近会社からいただくことができた。日頃の頑張りが成績になった結果だったが、荒木田の妨害が予想されるだけに、どうしても気が抜けない。
「年度末で忙しい時期だからこそ、有休をとる申請をしただけで、何をされるかわからない。だけどこの日はなんとしてでも、和臣と一緒にイブを過ごさなければ」
誰もいないフロアで、わざと独り言をこぼした。有言実行させるために、あえて口にしてみた榊の心は、静かに燃え盛ったのだった。その火があらぬところに飛び火するなんて、思いもよらずに――。
※不器用なふたり短編集でコラボします。お楽しみに!
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