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愛する想いを聖夜に込めて――3

☆ ⌒Y⌒Y⌒Y⌒  イブ当日、スリーピースのスーツの上にコートを羽織った榊は、ほくほくしながらレストランに向かう道を歩いていた。 「恭ちゃんのご褒美をおすそ分けしてもらえるなんて、僕ってばラッキーだな」  腕を絡めて隣を歩く和臣が、瞳を細めて嬉しそうに言う。  普段見ない和臣の正装。濃紺のスーツと、榊がクリスマスプレゼントで贈ったネクタイが締められている姿は、ちゃっかりスマホで撮影するくらいに素敵なものだった。 「俺のパートナーとして、影でしっかり支えてくれた貢献者である和臣に、何もしないわけがないだろ」 「そういう恭ちゃんも、僕のことをたくさん支えてくれたよね」  絡めた腕に力を入れて、頬擦りするように榊にくっついた笑顔でいる和臣の写真を撮りたいと切に願った。 「そろそろ目的地ですよ、お客様」  ふわふわの頭に自分の頬をスリスリして知らせると、びっくりした表情で絡んだ腕を慌てて解く。驚いた顔をしている和臣を見てから、視線の先を辿ってみた。そこにいたのは橋本と宮本で、向こうも和臣同様に驚いた面持ちでこちらを見ていた。 「橋本さん?」 「恭介?」  ちょうどレストランの店先で、鉢合わせになる。 「恭介もしかして、この店を予約しているのか? 予約しても、一年先しか空いてないらしいのに」 「橋本さんこそ……。どうやってこの店の予約をゲットしたんですか?」  自分のように会社から報酬としてもらえる可能性があると思ったが、あえてそこを指摘せずに訊ねてみた。 「馴染みの客がいつも世話になってるからって、プレゼントしてくれたんだ」  榊の問いかけに、橋本はちょっとだけ顎を引きながら答える。馴染みの客という言葉の濁し方で、相手の情報をうまく隠しているなと思った。 「高給取りのお客様ならではって感じですね」 「随分と含みのある言い方するのな。そういう恭介こそ、どんな手を使ったんだよ?」 「俺は会社から頑張ったご褒美という形でいただいたんです」  突っかかる橋本の物言いに、笑みを浮かべながら素直に答えた。 「お~。さすが仕事のできる男は、貰うものも一流じゃねぇか!」  見えない火花を飛ばし合うふたりをみて、和臣は視線を右往左往させつつ困り果てた。どうやってこのやり取りを終えさせようか、一生懸命に考えていると。

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