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愛する想いを聖夜に込めて――4
「陽さん、そろそろ中に入りましょうよ。こんなところで揉めてる場合じゃないと思います」
空気の読めない宮本がナイスなタイミングで割って入り、見事に話の腰を折ったため、次の口撃をしようと話しかけた榊は、息を飲んで唇を引き結ぶしかなかった。
「揉めてるわけじゃないって。恭介のことを褒めてたんだぞ」
キツい口調で返事をされたというのに、宮本はそんなの関係ないといった感じで何度か目を瞬かせてから、榊に向かって口を開く。
「キョウスケさん、すみません。陽さんが子どもみたいな態度で、突っかかってしまって」
わびしげな表情で太い眉毛ををしょんぼりさせながら、ぺこりと小さく頭を下げた宮本に、榊はぶわっと慌てふためく。橋本の恋人にこんなことをさせた時点で、ヤバい状況なのは明らかだった。
「俺から突っかかる物言いをしたので、橋本さんは全然悪くないんです。宮本さん、頭を上げてください!」
「宮本さん、本当にごめんなさい。恭ちゃんが橋本さんと、無意味に張り合ったのが原因なんです。僕の前で格好つけようとしたから」
「恭介、和臣くん、俺のほうこそ悪かった。まさかここで、鉢合わせになるとは思ってなくてさ」
3人それぞれ頭を下げたタイミングで、宮本が頭を上げた。そこはかとなく微妙な空気が辺りに漂うのを感じながら、橋本と目の前のふたりも頭を上げる。嫌な雰囲気を一掃するように、宮本が手を叩きながら明るい口調で言い放った。
「と、とりあえず一件落着ということで、中に入りましょう!」
榊と和臣の背中を宮本自らぐいぐい押して、先に行かせようとした。
「宮本さん、お気遣いありがとうございます」
和臣が宮本に礼を告げて、あでやかに微笑んだ。可愛い系美青年の和臣に真正面から微笑まれた宮本は、あからさまに照れて、両手を落ち着きなく動かす。あたふたしまくりの恋人の利き手を橋本がぎゅっと掴み、自分へと引き寄せた。
「和臣、コートを預かるって」
先に入っていた榊が和臣を呼び、店の中へと招き入れた。着ていたコートを預けたふたりは、エレベーターで最上階に案内されたのだった。
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