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聖夜当日3

「それじゃあレポート的な?」  意味深に笑う和臣の手を無理やり引っ張り、上半身に載せた。愛おしい恋人の重さを感じながら、榊らしくない甘えた声で口を開く。 「どんな言い方でも和臣の言うことなら、俺はなんだって聞く」 「だったら来年予約したレストランで、僕にピアノを聞かせてほしい!」 「曲は?」  すごいお強請りだなと思いつつ、意を決して訊ねた。暗闇でもわかるくらい、目の前にある顔は喜びに満ち溢れていて、そんなにワクワクさせることなのかと、少しだけ呆れる。 「僕に贈りたい曲を選んで!」 「和臣に贈る曲なら、ラブソングに決定だな」 「僕を感じさせたこの指先で、心に響く音色を奏でてね♡」  口角の上がった唇が、しっかりした約束をかわすために、榊の唇に重ねられた。目を見開いたまま、触れるだけの口づけを受けていたが、不意に顔の角度を変える。 「んぅっ!」  先ほどまでは打ち止めだと思っていた、榊の躰だったが、嬉しそうな和臣の顔を見ているだけで、疲れが吹き飛んでしまった。 「き、恭ちゃん?」  榊の躰の変化に、うっすら赤みをさした和臣の頬。それに引き寄せられるように、口づけを落とす。 「和臣の熱、俺に伝染したみたい。どうしよう?」 「どうしようなんて、僕としては嬉しい展開だけど……。まだ余裕あるし」 「やれやれ。和臣の相手をするには、もっと体力をつけないとだな」  クスクス笑った榊は、和臣の躰を抱きしめて、くるりと反転する。勢いよく回転したせいか、和臣の躰がベッドの上で軽くバウンドした。 (こんなことで簡単に弾んでしまう臣たんの躰を、大切に扱わなきゃな――) 「僕の相手をするのは、恭ちゃんだけなんだよ。この先もずっと。だから無理はしないでね」 「ありがとな、和臣。躰の心配とピアノのこと」  昔あったことがトラウマとなり、もう二度と自らピアノを弾くことはないと思っていた。それなのにそんな暗い過去すら、和臣のお強請りと笑顔のお蔭で、いとも簡単に払拭された。  榊は改めて、和臣の存在の大きさを考える。それと同時に、どんな曲で魅了してやろうかと、奮起する気持ちが湧き上がり、ピアノが弾きたくてたまらなくなった。 「当然でしょ! だって恭ちゃんは、僕の大事な人なんだからね」 「和臣は俺にとって、愛おしくてかけがえのない、大切な存在だ」 「恭ちゃん……」 「和臣に大事に想われるようにすべく、俺も同じ想いを返せるように頑張る。だからずっと、傍にいてくれ」  微笑みあうふたりの想いが熱となり、蜜のように絡まる。それを表現するかのように、このあと抱き合ったのだった。  愛でたし 愛でたし♡ ※レストランでピアノを弾いていた青年のお話は【BL小説短編集】シェイクのリズムに恋の音色を奏でて♡に掲載予定です。お楽しみに!

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