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すれ違う笑いのツボよりも愛は深く――3

 それと同時に、かわいい幼馴染みを誰にも取られないようにという、恭介の中の独占欲が表れている行動だったのに、いつの間にかそれが和臣を和ませていたなんて、思いもしなかった。 「自分にはもったいないくらいカッコイイ恭ちゃんと結婚できたのも、幸せすぎて時々夢なんじゃないかって思うことがあるんだ」 「俺ってば、カッコイイだけの存在なのか?」  面白くない表情を作りこんで、わざと顔を歪ませてみる。 「ふふっ、かわいい」  繋いでいない和臣の手が、俺の頬をちょんちょんと突っついた。 (かわいいのは、臣たんのほうなのにな――) 「俺のどこがかわいいんだよ?」 「ときどき小さいコみたいに、意地を張ったりするところかな。唇を尖らせてスネた顔なんて、幼稚園時代を思い出すよ」  クスクス笑ったと思ったら、さっき突っついた頬にちゅっとキスをしてくれた。柔らかい和臣の唇を感じた瞬間、ムラムラするモノが引きずり出されそうになる。 「和臣ってば、やっぱり変わってるよな。俺の意地を張ったところがかわいいなんて。変だろ、それ……」 「それだけじゃないよ。ココもかわいいよね、今は」  告げられたセリフと含み笑いを浮かべた顔つきで、何を示すかのがすぐに分かった。下半身に向かって伸ばされた手を掴みとり、にぎにぎと握りしめてやる。 「かわいいままにしておいてくれ。それにテレビが見たい」 「え~っ、手持ち無沙汰だよ」 「手持ち無沙汰にならないように、目の前で『笑っちゃいけない!』がやってるだろ。ほらほら、もう着替えが既に終わってるじゃないか」  自分がテレビを見るように促したが、映し出されているものがすごすぎてお互い暫くの間、言葉を失ってしまった。 「恭ちゃん、今年のテーマは何だっけ? 僕、見間違えちゃったのかな……」  和臣が訊ねてくるのも無理はない。だって芸人の皆さんが身に着けているものは、どこからどうみてもメキシコ警察とは関係のないものだったから。 「俺の記憶が確かなら、この服装は『太陽に向かってほえろ!』に出てくる刑事の恰好のような気がする。小さなブラインドを手に持ってる奴が、ボスなんじゃないか?」  言いながらテーブルに置きっぱなしにしていたスマホを手に取り、サクサクっと検索をかけてみた。

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