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すれ違う笑いのツボよりも愛は深く――6

 突然現れた外国人に、芸人たちはそれぞれ顔を見合わせ合い、肩を竦めて分からないことをアピールすると、ふたたび同じ言葉を苛立った様子で口にするなり、ジーパン刑事を見下ろすように立ち塞がった。 「和訳が出てこないから、何を言ったのかが分からないよ」 「いつもなら出てくるのに、何かあるのかもしれないぞ。ちなみにさっきのは『誰か薬を持っていないか?』って聞いたんじゃないかな」 「おお~っ、あれを聞き取れちゃう恭ちゃんカッコいい!」  言うなり俺の腕をぎゅっと抱きしめながら、柔らかい頬をすりりと擦りつけてくる和臣が可愛くて仕方ない。  あまりの可愛さに手を出したいものの、姫始めをする誓いを立てているのを咄嗟に思い出し、和臣からテレビに視線を移して、困惑する面々をじっと眺めてやり過ごしながら口を開いた。 「あのさ、薬といっても『メキシコ警察体験版』の建物の中でそれを言ったことを考えると、麻薬や覚せい剤みたいな薬を意味しているだろうな」  ところどころ上擦ってはいたが説明を付け加えたら、和臣は抱きしめていた腕を外して、なぜだか顔を寄せてくる。 「なるほど~。それで?」  自分の顔をまじまじと見つめる和臣の視線をひしひしと感じつつ、ムラムラする気持ちを必死になって追い払った。 「おっ俺の顔を見ていないで、テレビを見て自分で考えろよ……」 「うわぁ、恭ちゃんってば自分だけ分かっててイジワルするんだ。もういいよ!」  繋いでいた手を外して両膝を抱えるように座り直す和臣に、いいわけができない自分。繋いでいた手の温もりが瞬く間になくなっていく。 「和臣、意地悪なんてしていないって。違うんだ」 「何が?」 「それは……うー。えっと」  素直に言うべきか否かを迷いに迷った。しかしながら自分の事情を和臣に押しつけるのが嫌だったので、思いついたことを口にしてみる。 「俺ひとりで考えるよりもふたりで考えたほうが、面白いかなぁと思うんだけど……」 「ごめんね、何にも考えないで恭ちゃんを頼っちゃって」  冷たく言い放って、顔を明後日のほうに向けられてしまった。 「たっ頼られるのは構わないんだ。大好きな和臣に頼られて、嬉しくないわけがないだろ」  ちょっとだけ震える声で弁解をしながら、和臣の顔の向きを強引にテレビに向けてやる。

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