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第2話
「こんなところでどうしたの?」
津麦はねぇねぇという感じで多米に聞く。ちなみに、尾場は津麦のココアを入れに店の奥へと姿を消していた。
尾場には助けてもらえないと悟った多米は意を決して答える。
「まぁ、ゲーム屋だしゲーム、買いに?」
多米は答えたものの、ただゲームを買い求めていたならクマのマグカップは握りしめてはいないだろう。だが、ゲームを買う、買わないというのも嘘ではない。
尾場とゲームの感想を言い合ったり、たわいもない話をして、気になるものがあれば購入して帰宅するところだったというのが1番しっくり来る回答なのだろうが、変に話を広げられても困ったことになるかも知れない、と多米は思ったのだ。
「まぁ、そりゃそうか……」
然程、気にしたようでもないように津麦は呟くと、多米はあることに気づく。
確かに、津麦とは同じ大学の、同じ学部の、出席番号が2つ違いの同窓生なのだが、もっと身近な感じがしていた。
そう、例えば、よく通る実況者向きの声。人懐っこいキャラクター。身バレ防止のマスクも勿体ないそこそこに整った顔立ち。
まるで……
「聞いたからには俺も答えなきゃな。俺は実は実況を上げていててさ。次、やるゲームの候補を何本か、物色にきたって感じで」
津麦は「もしかして、知ってるかな?」と多米に聞くと、多米は津麦が言う前に彼の実況を上げる時の名前を口にしていた。
「びーふん」
びーふん。
彼は5本の指に入る大人気男性実況者で、よく通る実況者向きの声と明るくて、愛嬌と不快にならない程度の?下ネタのある実況で人気を博している。
おまけにまだ現役の学生で、特に芸能活動をしていないながら、ゲームショーや動画の運営のイベントにもプレイヤーや解説者として参入しているらしい。また、無類のゲーム好き、日頃あまりゲームをしないを問わず、女性のファンも急増しているらしかった。
「驚いた。多米君って実況も見てるんだ」
何か意外かも、と声を弾ませる津麦に、多米も声が震えそうになる。
何故なら、多米は何を隠そうびーふんの実況のファンであり、圧倒的に違う再生数のこともあったが、最終的に彼の動画を出会ったことで、自身の実況をやめてしまったのだから。
「じゃあ……」
と多米は混乱しながらも、ココアのマグカップをレジ横のスペースに置くと、鞄を持って、そそくさとOGSを後にしようとする。
後にしようとする……すると、津麦はパシっと多米の手を掴んだ。
『再生数:24』とカウントされた動画を上げたのはkyo-という実況者で、それに対して、『再生数:260102』とカウントされていく動画を上げたのはびーふんという実況者だった。
これは多米杏一と津麦桃李が偶然、OGSという小さなゲーム屋で出会う物語である。
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