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第4話
実況で使うPCに、ヘッドセット。それにレトロゲームから最新のゲームの実況できるように、キャプチャーボードが2種類あり、部屋はあらゆる機種のソフトが棚の中外を問わず、並べられて、積み立て上げられていた。
「凄い……」
多米はまるで初めて、人が足を踏み入れるダンジョンに1歩、歩みを進めた冒険者のように一言だけ呟いた。
「ああ、中2から5年、我ながらよくやったかなって」
津麦は1週間程前に最終実況を上げたゲームのパッケージをスッと持ち上げると、再び、積んであったゲームの塔に戻す。
多米が実況動画を上げたのは高校3年生の大学受験が終わった時だったのだが、津麦は中学生の頃から既に実況動画を上げていたのだ。
とは言え、流石に初期の頃は画像の処理が荒々しいところや喋り方がたどたどしいところなんかもあるのだが、多米は津麦のそれらに光るものを感じていた。
「あ、そう言えば、たーさんはどういうのが好き?」
「どういうのって?」
「ほら、RPG、アクション、ホラゲー、音ゲー、あとテキスト系とか?」
「ああ、ジャンルのこと……」
たーさんこと多米は呟くと、今までやってきた様々なゲームを思い出す。
多少は不得手なものや好みに合わないものもあったが、多米も津麦と同じで様々なジャンルのものをしてきたつもりだった。
「成程、成程。じゃあ、あんまり苦手なものはないってことね」
「あ、うん……」
1人で納得している津麦に、多米は若干、困惑する。
ただ、次の瞬間、多米はもっと困惑することを津麦から言われる。
「俺とゲームの実況者とかなってみない?」
「突然だけど、僕と世界を救ってくれませんか?」
なんて言われた当事者から見ると、相当いかれた台詞から突然、始まるロングプレイングゲームのように、津麦から言われ、多米は困惑を通り越して、動揺をきたす。
だが、そのゲーム同様「いいえ」という選択肢はなく、多米自身も知らない間に同意して、次回から十李とkyo-としてゲーム実況をすることになり、何のゲームをするかも決めてきた。
『どうして、俺と実況を?』
という言葉を困惑し、動揺をきたす中でも言ったように思うと、津麦は笑う。
『どうして……か』
『うん』
『強いて言えば、多米君としてみたいからだよ』
女の子に言ったら、間違いなく殴られるか、警察に突き出されるような台詞だが、津麦に言われるならそこまでゲスい感じならないから人生不公平だと多米は思う。
しかも、
『それとも、俺とするのは嫌かな?』
と悲しげに言われると、多米も必死に否定して、同意してきたのだ。
「再生数24の俺があの、びーふんと共同実況……びーふんと共同実況するのが再生数24の俺?」
多米はまだ俄かに信じがたいと思いつつも、津麦との実況は楽しく、時間はあっと言う間に過ぎていった。
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