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第6話
「いらっしゃい」
尾場ゲームショップことOGSの尾場は2年前に比べると、少し腹部が出てきたこと以外は少し薄くなってきた頭部も身体の一部のような黒縁の眼鏡も、ラフなセーターにダボっとしたパンツに合わせるスタイルも何も変わっていなかった。
「こんにちは、尾場さん」
多米は言うと、津麦も先程の多米に感じた違和感を誤魔化すように戯けて挨拶をする。
「今日はどうしたの? なんか、ちょっとこわい顔して」
尾場は「まさか便秘とか?」と笑うと、多米は「びーさんが?」と言い、津麦も「俺? 俺は何でもないですよ」と言う。
確かに、多米も津麦も表面上は笑顔なのだが、多米は目だけが表情がなく、津麦は津麦で、いつも調子は鳴りを潜めて、口元がぎこちないように尾場の目には映る。
だが、尾場も無理には聞き出そうとはしなくて、最新のゲームを勧めてみる。
「今月はエタエデに、エンタク、ドラサバシリーズは勿論、新作ラッシュだよね」
「あ、ごめん。今日はもう買うゲームは決まってて……」
多米はいつになく、滑らかにゲームのタイトルと発売された年を尾場に告げる。すると、尾場は一瞬、驚いたように目元を動かしたが、地下にあるから少し待つように言う。
そして、従業員用……というよりは尾場専用の扉の奥へと消えて数分で戻ってきた。
「お待たせ。こちらが2004年に『じゃむおおか』から発売された『LOVERS』です」
パンなのか、ご飯なのか些か迷うゲーム会社から生まれた、ゲームのタイトルは『LOVERS』。
ど直球で、恋愛ものだと分かるタイトルには2人の明るめの茶髪と暗めの茶髪の人物が描かれているものの、どちらも男性のキャラクターのようだ。
勿論、男性のダブル主人公で、美少女や美女、美魔女達を攻略をしていくタイプの作品もあるだろう。
「エンディングの殆どがバッドエンド。しかも、可愛い女の子と仲良くなるゲームではない」
尾場はそこまで言うと、このゲームのジャンルを告げる。このゲームのジャンルは男女ではなく、男性同士の恋愛を描いたもの……所謂、BLもののゲームだった。
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