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第8話
栗田の心の言葉を最後に、画面が一瞬、赤く染まり、その次の瞬間、血溜まりに柿埼のだらりとした手のアップが映し出される。
「うわあああああ……!!」
柿埼役の十李こと津麦が叫ぶが、栗田役のkyo-こと多米は「バカ。それは俺の台詞だろうが」と言う。
「お前、冷静すぎっぞ!! 血、通ってる?!」
「血は通ってるよ!! あ、もう!! うわあああああ……!!」
台詞を読み進めつつ、かと言って、これは演劇ではなく実況動画の為、多米と津麦は自身の感想や会話を交えながら実況を進めていく。
ゲームの内容としては栗田と柿埼は共に大学生で、栗田は柿埼に好意を抱いているらしい。
ただ、その栗田の思いも虚しく、柿埼は不慮の事故に遭い、帰らぬ人になるという。
一見、物語が終わったような、始まりだが、彼らの話はここから始まる。
『時を柿埼大地と出会った頃に戻すことができますが、戻しますか?』
と画面には表示され、『はい』という表示と『いいえ』と表示がある。
「最初は『いいえ』を選択できないようになってるみたいだな」
「うん、説明書によると、何週かして、フラグが立ててから選択可能って感じみたい」
「成程。じゃあ、1週目なので、『はい』で」
津麦は『はい』にカーソルを合わせるとクリックした。すると、画面には砂時計の底の部分へ落ちた砂が落ちる前の状態へ戻っていく。それと同時に、柿埼がトラックに轢かれた状況から起き上がり、栗田に話しかけるまで戻り、空が青から白、黒から紫や赤に変わり、昼夜があっという間に移り変わっていく。
栗田が初めて柿埼と出会ったのは大学へ入って、1週間が過ぎた日のこと。
ある講義で、栗田の座っていた席の隣に座ったのが柿埼だった。
「えーと、『どうやら時を戻すことに成功したみたいです。ですが、同じ選択肢を選び続けると、貴方はまた彼を目の前で失うことになるでしょう。時には違う選択をし、彼を失わないようにエンディングを迎えてください』」
「O様に聞いたんだけど、このゲームは柿埼の死に方とか何によって死ぬかとかが違ったりするみたいなんだけど、殆どバッドエンドで、45つ。トゥルーエンドが1つ。特殊バッドエンドが4つあるみたい」
「って結局、バッドは49つってこと? かなり鬱ゲーじゃん。頼むぜ、O様ぁ〜」
ちなみに、このO様とはOGSの店長の尾場のことで、尾場の頭文字の「O」と「王様」と響きが似ているのが由来で、彼らの実況ではよく名前の出る人物だった。
「まぁ、適当に違う選択肢を拾っていけば、何かのエンドには辿り着けるだろうからきびきびやってくぞ」
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