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第9話
「『お前のこと、本当はずっと好きだった。これから何度、出会っても』」
基本的には『LOVERS』は栗田が大学1年4月〜大学4年の4月までの物語で、栗田は友人の柿埼にどんどん惹かれる。
だが、柿埼は死ぬ。死んでは栗田が時を戻すことで生き返り、死に続ける。
それを回避するべく、選択肢を選び、時を遡りながら柿埼の死亡フラグを折ったり、恋愛フラグや特殊エンドフラグを立てたりする必要がある。
「『NO.35 すれ違ってしまった想い』」
このエンドではわざと柿埼につれなくして、栗田が柿埼の死亡フラグを折ろうとしたのだが、それでも栗田の関係ないところで謎の無差別通り魔事件が起こり、栗田はまた大学1年の柿埼との出会いからやり直す。
「今、何個くらい回収してるんだろうね」
「さぁ。まぁ、今日は収録時間が長めだからこの辺りにする?」
「オッケー。じゃあ、今回は『NO.19 幼馴染みの女』と『NO.20 幼馴染みの男』、それに特殊エンド『NO.35 すれ違ってしまった想い』を攻略しました」
「コメントやマイフェイバリットしてくださると励みになります」
「では、十李と」
「kyo-で」
「「お送りしました」」
実況をそれぞれ編集点を作りながら、3本分、撮り終えると、津麦はゲームを切り、編集に入る。
明るかった昼の空はすっかり、真っ暗な夜の空で、津麦の為に多米は近くのコンビニでビーフンを買い、パンを3、4つと飲み物類を買って帰る。
「ありがとうございましたー」
と店員が言うのも、いくら無愛想である多米でも「どうも」くらいは言うのに無言でコンビニを出る。
それは津麦が原因だった。
「じゃあ、俺、買い出し、行ってくるわ。いつもの大盛りビーフンか、なかったら、ラーメンかうどんで良い?」
「うん。あ、もし、良かったら、服とか持ってきなよ」
「え?」
「ちょっと仮眠とったら、ドラサバ、やりたい」
ドラサバ。
正式名称はドラゴンサバイバル。
武器や防具を作る為にドラゴンを手なづけたり、倒したりするゲームなのだが、1人よりも2人でプレイする方が遥かに効率の良いゲームだった。
「分かった。じゃあ、ドラサバも持ってくるわ」
「本体も忘れるなよ」
「びーさんじゃあるまいし」
多米の家も蓮田大学からそんなに離れていない。
津麦の借りているアパート・ヌードリアン・メゾン Iから10分くらいで行き来できるのだろうが、その時間を惜しむくらい、多米達が互いに会って過ごせる時間はあと僅かだった。
「もし、大学1年に戻れるなら戻りたいな。で、あいつとゲームして、いつまでもバカみたいに笑ってさ」
多米は津麦のアパートに帰る道中、誰にも聞こえないように呟くと、買い物袋と着替えやゲーム機の入った鞄を持って歩いた。
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