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第12話

「あぁ、これだよ。これ。仮に1年で死んだとしても、少しだけでも友人から恋人になれたんじゃないのかな」  津麦はそんな風に言うと、多米は複雑な思いで黙る。  ただ、これは単にゲームプレイではなく、実況なので、いつまでも黙っている訳にもいかない。 「そう……かもね。でも、何か意外。結構、ロマンティストなこと、言うし」 「おう、今度からロマンティスト十李と呼んでくれ!」 「ワカッタヨ。ろまんてぃすとトーリ」 「何、その棒読み〜〜それで、kyo-さんは?」  津麦が多米に印象的なエンドを聞くと、多米は少し困った。  先程は表面的には多米は平常心でNO.38は『知り合い?』で、NO.39は『心中』だと答えているように見えたが、多米も1番印象的だったのはNO.39『心中』だったのだ。 「うーん、俺は悩むけど、NO.43『独りで』かな?」 「『独りで』?」  タイトルの通り、NO.43『独りで』はNO.40の『戻らなかったタイムトラベラー』から派生エンドで、柿埼が死んだ後、栗田がNO.41の『彼女と』やNO.42の『彼氏と』とは違い、独りで生きていくことを選ぶエンドだ。 「辛いエンドだけど、本当に好きなヤツなら死んでもずっと好きだろうし、他の誰かを好きになるなんて考えられないと思う」  限られた時間の中でお互いを愛し合う。  片や、ずっと1人の人間を思い続ける。  後者は片方が死者になっているので、真逆ではないが、同じ「愛し合う」、「思い続ける」としても、栗田と柿埼が思う恋愛は少し違う。  そして、多米と津麦が思う恋愛も……。

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